契約交渉のアンカリング(Anchoring)って何ですか?
もともとは、「船舶が錨(アンカー)を下ろすこと」を意味します。
交渉戦術になぞらえて語られることがあります。
アンカリング(Anchoring)とは
アンカリング(Anchoring)のアンカー(Anchor)は、船舶の錨(いかり)のことです。
したがってアンカリングのもともとの意味は、「錨を下ろして船舶を係留すること」です。
船舶をアンカリングすると、その船舶は限られた小さな範囲では動きますが、遠くには漂流しません。その絵図を交渉シーンに当てはめて、交渉におけるアンカリングという形で使われています。
交渉におけるアンカリングは、交渉者が最初に条件を投じて、その条件を準拠点にして交渉を進めることをいいます。そうすることによって、最初に投じた条件から大きく離れない範囲で交渉が妥結できるという効果が生じます。この効果をアンカリング効果といいます。
売買価格交渉を例にとって考えると、買い手の方が最初に思い切って安い価格を言った方が、逆のケースと比べて最終妥結額は安くなる傾向があります。
また売り手の「通常価格は〇〇円。今日注文してくれたら4割引きの〇〇円」というような表示も、アンカリング効果を狙ったものといえます。
このように、私たちは誰でも、そんなに意識することなしに、日常生活でアンカリング効果を狙った行動をしています。
アンカリングするときの注意点
そのような効果があるなら、交渉優位に立つためにとにかく自分に有利なアンカリングをしたらいいんだな、と発想しがちですが、そこはちょっと注意が必要です。
その注意というのは、「アンカリングには根拠が必要だ」ということです。
買い手が出した指値が市場価格の10分の1だったら、売り手はどう受け止めるでしょうか。
「あほくさ。交渉するだけ時間の無駄だ。悪いけど、よそへ行ってください。」ということになりますね。
さらには業界仲間に対して「あほな奴おるで。そちらに買いに行くかもしれんが、注意しときや。」というような連絡をするかもしれません。
その無謀なアンカリングをした買い手の信用はがた落ちです。交渉で優位に立とうと思って行ったアンカリングが逆効果になりました。
アンカリングで出す条件は合理的なものでないといけません。
契約交渉におけるアンカリング
契約交渉におけるアンカリングとして重視したいのは、「自ら積極的に契約ドラフトを提示しよう。」ということがあります。
事前協議で契約書のドラフトを出す役割を勝ち取ったケースでは、アンカリング効果により最終的にはドラフトを出した当事者に有利な内容の契約になることが多いです。
しかし、ここであらためて注意したいのは、アンカリング条件の合理性です。提示する契約書ドラフトが、極端に提示者側に一方的に有利な条件であった場合、信用を失うことにもなりかねません。
策に溺れず、バランス感覚に優れた、当社にとってやや有利な内容の契約ドラフトを出すようにしましょう。
アンカリングについて理解できました。
契約のドラフトを出せると交渉の主導権が取れますね。
通常、提示した契約ドラフトがアンカーとなり、それから大きく乖離しない最終契約になりますので、効果的かと思われます。