相手方の倒産リスクを想定していなくてあぶない

あぶない契約書
どてらいさん
どてらいさん

契約相手方の倒産に伴うインパクトを軽減したり回避したりするためには、どんな契約にすればいいのでしょうか?

すぎやん
すぎやん

倒産対応は時間勝負なので、有事になるべく早く打つべき手を打てるような契約にするのがいいです。

相手が倒産したときのインパクト

契約相手が倒産したときには以下のようなインパクトが予想されます。

  • 納品した商品の対価を支払ってくれない。
  • 発注した製品が納入されない。
  • 提供したサービスの対価を支払ってくれない。
  • 発注したサービスが提供されない。
  • 貸与していたお金や物を返してくれない。

いずれも大きなインパクトを受け、場合によっては自分自身の経営基盤が揺らいで連鎖倒産のリスクが生じる可能性もあります。

一刻でも早い対応が必要

契約相手が倒産しそうだとの情報が知れ渡ると、契約相手が取引している取引先が一斉に我先に自己のインパクトの最小化に向けて動き出します。
ここでは正直なところ早い者勝ちの世界です。
後れを取るとインパクトをもろに受けてしまうことにもなりかねません。

したがって誰よりも早く対応できるように、契約上の規定をしておくことが大切です。

倒産リスクに備えた契約書にするために・・

相手方の倒産リスクに備えた契約書にするためのヒントをいくつか挙げてみます。

情報を早期に入手するために

1つのヒントとして、相手方の経営状況を掌握するための手段を契約に織り込むことが考えられます。

特に長期に継続的に行なう取引を対象とする契約の場合は、経営状況(財務諸表など)の定期的な報告、情報提示要請に従う義務の規定、監査権の規定等を入れて、契約相手の経営状況を把握する必要があるでしょう。

契約締結時には相手方の経営状況を調査することが多いですが、その後の動きを追わず、突然の経営不安情報に慌てて対応するが時すでに遅しという悲劇に陥らないために、情報開示義務をつけておくことは大切です。

確実に回収できるような取引条件にする

これについては「債権回収の配慮不足であぶない」の項をご参照ください。

相手方が倒産しそうだとの情報が入ったときの対応を規定する

相手方が倒産しそうだという情報を入手したときは、もしその可能性が現実化したときのインパクトを軽減するために以下のような措置をとります。

  • 相手方が将来支払う予定の対価を、直ちに支払わせる(期限の利益の喪失)。
  • 契約上後払い条件だったのを、先払い条件に切り替える(取引条件の変更)。
  • 契約を解除をして、納品したが支払いを受けていない商品を引き戻す。
  • 製品またはサービスの発注を取消して、他の取引先に発注する。

問題はこれら措置のトリガーとなる「倒産しそうだという情報」の位置づけです。
根拠のないうわさ話によって上記のような措置をされてしまうと相手方も強いインパクトを受けることになります。
したがって、そのトリガーとなる内容については、議論が必要です。

下記条文例でいうと。4号後段と5号あたりは、議論の余地があります。
また、あまりにも自分勝手な方法で倒産インパクト軽減措置を実行すると、破産法等の法令上でその措置が無効とされることもあり得ます。

したがって、そのような場合が実際に生じたときは、弁護士等の専門家に相談することを検討しましょう。

第〇〇条(期限の利益の喪失)
乙は、自らが以下の各号の一に該当したときは、甲に対する一切の金銭債務について当然に期限の利益を失い、直ちに債務全額を甲に支払わなければならない。
(1) 製品の代金の支払を一部でも怠ったとき
(2) 差押、仮差押、仮処分、租税滞納処分もしくは競売等の申立を受けたとき、または破産、民事再生、特別清算もしくは会社更生手続開始等の申立があったとき
(3) 資本の減少、営業の廃止、休止、変更等をし、または第三者に管理される等営業内容に変更があったとき
(4) 手形、小切手を不渡りにする等支払を停止したときまたはそのおそれがあると認められるとき
(5) 信用状態が悪化したと甲が認める事由があり乙に通知したとき
(6) 前項各号の一に準ずる事由があったとき
(7) その他本契約または個別契約の各条項の一に違背したとき

第〇〇条(契約の解除)

1.甲は、乙が前条の各号の一に該当したときは、何らの催告もしないで即時本契約および個別契約の全部または一部を解除することができるものとする。ただし、前条第7号に該当する場合は、催告後相当期間内にこれが是正されない場合に限る。

2.前項により解除された乙は、解除に伴う損害賠償を一切請求できない。

3.甲は、乙が前条各号の一に該当したことによって損害を被ったときは、乙に対し、第1項に基づき契約を解除したか否かを問わず、その損害の賠償を請求することができる。