BATNA、RV、ZOPAってなんですか?
交渉戦略を検討するときに設定する概念をさす用語です。
普通のビジネスマンはこれら用語を覚える必要は全くないですが、契約交渉を行うにあたって、これらがどのような概念なのかは知っておくと良いです。
BATNA、RV、ZOPAとは交渉学の用語
交渉学という学問があります。ビジネス交渉を科学的に分析・探求する学問で、米国ハーバード・ビジネス・スクールなどから発展した学問だと言われています。
BATNA(バトナ)、RV(アールブイ)、ZOPA(ゾーパ)というのはその交渉学の中で使われる用語です。
以下若干説明しますが、分かりやすいように事例を設定します。
【設定事例】
当社は、この度A社から新規生産設備を購入するので、今後使用予定のない中古設備Xを処分したいと考えている。
A社からは、中古設備Xの買取(下取り)代金として30万円の見積りを受けている。A社はこれを買い取って、海外に輸出する目論見のようだ。
そんなある日、当社は同業のB社が設備Xを欲しがっているという情報を入手した。
そこで、この度B社と交渉に臨むことになった。
BATNA(バトナ)
BATNAとはBest Alternative To Negotiated Agreementの略で、直訳すると「交渉で合意することに次ぐ最善の代替策」です。
交渉が決裂したときに自己が取り得る最善策ということで、交渉に臨むときには、必ず描いておくべきものとされています。
事例でいうと、B社との交渉に決裂したら、「A社に30万円で買い取ってもらう。」というのがBATNAになります。
BATNAを設定せず、「退路を断って交渉に臨む」という心構えは確かに潔い感じはしますが、交渉戦略としてはあまり勧められたものではないです。
法務実務の場面でも、営業現場から「今週中にこの契約をしないと、今月の売上計画が未達になる。」という形で、不利な条件のまま早急に妥結するよう求められることがありました。
これだと目の前の契約を締結することありきで、BATNAがない交渉になっています。確かにこの契約交渉が決裂したら、今月の売上計画は未達になるのかもしれませんが、その売上未達により失う利益よりも、慌てて不当な条件のまま契約を締結したことにより後々被る不利益の方が数倍大きいこともありえます。
RV(アールブイ)
RVとはReservation Valueの略で、直訳すると「留保価値」です。
ここを下回る条件なら絶対に合意しないという条件を指します。通常はBATNAの条件がRVになります。
事例でいうと、B社との交渉のRVは「買取価格が30万円」になります。
ただし実際には、複数の要件でRVを決めることになります。事例でいうと、単に買取価格だけではなく、運送費や設置費の負担とか、売却した後の保証条件など様々な要素を考慮してRVを決めることになります。
ZOPA(ゾーパ)
ZOPAとは、Zone of Possible Agreementの略で、直訳すると「交渉が妥結する可能性のある条件範囲」です。
相手のある交渉では当然に相手方もBATNAとRVをもっています。ZOPAとは、当方のRVと相手方のRVの間のことを指します。
事例でいうと、B社のBATNAとRVが「収支計算上50万円の設備購入予算があるが、それを超える価格なら購入を見送り、現有設備の使用を続ける」というものだとしましょう。
この場合、当社とB社の交渉におけるZOPAは「買取価格30万円~50万円の間」となります。
交渉を分析すると
交渉は、ZOPAの中でいかに相手方のRVに近づけたところで妥結するかというせめぎあいになります。
したがって、自己のBATNAやRVは相手方に悟られないようにするというのが定石です。腹の探り合いと場合によっては「はったり」も含め戦略を駆使しつつ交渉するわけで、ゲームのようですね。
契約交渉では
実際の契約交渉では、多くの条項がありますし、一つ一つの契約条件に関しても様々な考慮要素が複雑に入り組んで、交渉学の理論がすっきりと当てはまらないこともあります。
しかし、契約交渉に臨むにあたっては、これら理論をちょっと頭の片隅において、交渉戦略を検討することが、良い結果につながるはずです。
言葉は知りませんでしたが、説明頂いたような検討は以前からやっていたかもしれません。「どこまでずれるねん」という基準は心において交渉していますね。
どてらいさんは交渉の経験も豊富だし、さすがですね。