強行規定違反の契約条項は無効ではありますが・・・

あぶない契約書
どてらいさん
どてらいさん

法令に違反する契約条項って無効だから、無視して従わなくても良いですよね。

すぎやん
すぎやん

なんかあったのですか?

それはそうですが、その状態はややこしいですよ。

強行規定と任意規定

法令の規定は強行規定任意規定に分けることができます。

当事者間の合意(契約)に関係なく強制的に適用されるのが「強行規定」で、当事者間で法令の規定と異なる合意(契約)をしたらその合意(契約)が優先して適用されるのが「任意規定」です。

この強行規定と任意規定の区別は、法律の条文で明記されているわけではないので少し難しい部分もありますが、刑法系の法規や、労働関係法規、消費者保護関係法規、独占禁止法関係法規、下請法等公共性の高い法規や弱者保護を目的とした法規には強行規定が多く含まれます。
一方、私人間の関係について規定する民法の債権編には任意規定が多く含まれます。
また、違反したときに罰せられることになる規定は強行規定といえます。

ただまあ、ビジネス実務の世界では、ある法律の規定が強行規定か任意規定のいずれに該当するか厳密に区分することはあまり意味はなく、法規にはこのような区分があるんだなということを知っていただくことで足りると思います。

強行規定に反する契約の規定は無効ではありますが…

民法第90条に次の条文があります。

(公序良俗)
第九十条 公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする。

強行規定に違反した契約をすることは、公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為にあたるので、この民法第90条に基づき無効になります。
強行規定に違反した契約規定は無効ですから。それに従わなくても契約違反の責任を負うことはないというのが理屈です。

ただ注意しないといけないのは、ある契約のある規定(仮に第9条とします)に違反してことで紛争が生じたときに、その第9条が強行規定に違反するか違反しないか(すなわち、無効かそうでないか)という論争を究極的に解決するには、裁判での最終判決によらざるを得ないということです。つまり、ここに至るまでに多大な時間と費用と労力を要するということです。

したがって、そんなことにならないよう、強行規定違反の条項を契約書に入れないよう、契約交渉段階で十分協議することこそ大事なんです。

契約の中に強行規定違反の条項があることで、問題になることもある。

さらに注意しないといけないのは、強行規定違反の契約条項が当事者間で無効ということだけで済まないことがあるということです。

もし、契約の中のある条項が強行規定に反して無効になるにもかかわらず、契約当事者が、契約違反は許されないとして、その条項どおりの行為を行った結果、強行規定に違反することになった場合、行政官庁からの指導、監督を受けたり、場合によっては刑罰に処される可能性もあることに注意しなくてはなりません。

ちょっとややこしいですね。架空のサンプル条文で考えてみます。

甲および乙は、本製品に関して官公庁の競争入札に応札するときは、事前に相手方と協議を行うものとする。

ちょっと極端なサンプルになりましたが、この条項は強行規定である独禁法違反の疑いがあります。契約にこんな条項があってそれに従った場合、独禁法違反になる可能性が高いです。

したがって、繰り返しにはなりますが、強行規定違反の規定を契約書に入れないよう、契約交渉段階で十分協議することこそ大事だといえます。

契約ドラフトに含まれているある条項が、強行規定違反の疑いがあるが確信が持てないという場面では、専門家(弁護士)に相談することをご検討ください。

どてらいさん
どてらいさん

疑いを持ったら、ちゃんと相手方と話してみることが大事ですね。