建設工事従事者全般と配置技術者

建設業法

建設業に関わる従事者として、許可取得時に出てくる「専任技術者」だったり、工事現場の「監理技術者」、「主任技術者」、「配置技術者」だったり、さらには経審の時に「技能者」などと、いろんな言葉が出てきてとてもややこしい感じですので、ざっくり整理しました。

建設業に従事する人々(技術者と技能者)

上記は建設業に従事する人の関係をイメージしていただくために作成した図です。
まず、工事現場で働く人の区分を見ていきます。

技術者と技能労働者(技能者)の区分

技術者と技能者は次のように区分されます。

技術者工事現場における建設工事を適正に施工するため、建設工事の施工計画の作成、工程管理、品質管理その他の技術上の管理、施工従事者の技術上の指導監督の職務を担う者。
建設工事の施工の技術上の管理をつかさどる者。
建設業許可申請で必要になる。
実際に施工にあたる「職人」ではなく、管理をする人であり、「現場監督」というイメージ。
現場に行かなくてもリモートでも業務可能とされる。
技能者建設業法上の定義は「建設作業の施工に従事する者」。
技能者で経験を積んで技術者になるというのが典型的なパターン。
技術を駆使して作業をする人であり、「職人さん」というイメージ。
経営事項審査には登場する用語。

技術者の中での区分

監理技術者建設工事の施工にあたり、下請負人を適切に指導、監督するという総合的な機能を果たす者で、主任技術者のように直接具体的な工事に密接に関与して細かな指示を与える者とは、若干性格が異なる。
特定建設業に所在。
元請が建設工事現場に配置する技術者。
特定建設業許可における専任技術者と同じ要件。→関連ページ
主任技術者具体的な工事の工程管理や建設工事の施工にあたり、その施工計画を作成し、工事用資材等の品質管理を行い、また、工事の施工に伴う公衆災害等の発生を防止するための安全管理等を行うとともに施工従事者の技術上の指導監督を行う者。
一般建設業に所在。
下請が建設工事現場に配置する技術者。
一般建設業許可における専任技術者と同じ要件。→関連ページ
専任技術者建設業許可で使用される用語。
原則として主たる営業所に常駐する。
現場の管理技術者/主任技術者と兼任について、工事の規模等により兼任できない場合がある。

建設業法に基づく「技術者配置の考え方」

工事現場に配置すべき技術者とは(建設業法第26条第1項、第2項)

・現場への資格者配置
建設業の許可を受けている建設業者は、請け負った工事を施工する場合には、元請・下請、請負金額の大小に関わらず、工事施工の技術上の管理をつかさどる者として、必ず現場に、当該工事について一定の資格を有する者(主任技術者又は監理技術者)を置かなければいけません。

・直接的、恒常的な雇用関係
工事現場に配置される主任技術者、監理技術者については、工事を請け負った建設業者との直接的、恒常的な雇用関係が必要です。したがって、直接的な雇用関係を有していない「在籍出向者」「派遣社員」や恒常的な雇用関係を有していない「短期契約社員」「臨時職員」等は、主任技術者、監理技術者になることはできません。
特に、国、地方公共団体等が発注する公共工事において、請負金額が4,000万円(建築一式工事は8,000万円)以上の工事を直接請け負う場合に配置される専任の主任技術者、監理技術者については、入札の申込(指名競争に付す場合で入札の申込を伴わない場合は入札の執行日)を行う日以前に、所属建設業者との3か月以上の雇用関係にあることが必要とされています。

・現場への標識掲示
工事現場に配置される主任技術者、監理技術者については、建設工事の現場ごとに一般の人の見やすい場所に掲示が義務付けられている標識「建設業の許可票」の中において、現場に配置する「主任又は監理技術者の氏名」、「その専任の有無」、「資格名(一級土木施工管理技士 等)」、さらに専任を要する監理技術者の場合は、「監理技術者資格者証の交付番号」を記載することとされています。(建設業法第40条、同法施行規則第25条)
建設工事の施工が建設業法による許可を受けた適法な業者によってなされていることを対外的に明らかにするため、建設業者に対し、建設工事(発注者から直接請け負ったものに限る)現場(現場は元請のみ)ごとに、一定の標識を掲げることを義務づけています。(建設業法第40条)

現場の標識例

技術者の専任が必要な工事とは(建設業法第26条第3項)

請負金額が4,000万円(建築一式工事は8,000万円)以上となる場合で、公共性のある工作物又は多数の者が利用する施設を施工する場合は、工事の安全かつ適正な施工を確保するため、元請・下請問わず、工事現場ごとに技術者を専任で置かなければなりません。

「専任」とは、他の工事現場の「主任技術者」又は「監理技術者」及び「営業所の専任技術者」などとの兼任を認めないことを意味し、専任の主任技術者、監理技術者は、常時継続的に当該建設工事の現場に置かれ、当該工事現場に係る職務にのみ従事していなければなりません。

「公共性のある工作物又は多数の者が利用する施設」とは、国又は地方公共団体が注文者である工作物、鉄道、道路、ダム、上下水道、電気事業用施設等の公共的工作物、学校、共同住宅、事務所等のように多数の人が利用する施設等をいい、個人住宅を除いてほとんどの工事がその対象となっています。
なお、公共性のある工事において、現場に配置する監理技術者は、「監理技術者資格者証」(有効期間5年間)の交付を受けるとともに、監理技術者講習を5年ごとに受講し、監理技術者講習修了履歴の掲載を受ける必要があります。

(参考) 現場代理人とは
現場代理人は、建設業法で設置を義務付けられるものではなく、発注者との契約に基づき設置されているものです。現場代理人は、請負契約の的確な履行を確保するため、工事現場において請負人の代理人として、工事現場の運営・取締りなど、工事の施工に関する一切の事務(契約上の権利・義務に関する事項も含む)を処理する者をいい、施工の技術上の管理をつかさどる主任技術者、監理技術者とは概念的には全く別のものです。現場代理人の詳細については、各発注者において契約約款・仕様書等の中で定められています。

営業所に置く専任技術者とは(建設業法第7条第2号、第15条第2号)

営業所に置かれる専任技術者は、建設工事に関する請負契約の適正な締結やその履行を確保するために置かれるもので、常時その営業所に勤務していることが必要です。
                                    
専任技術者は、同一の営業所に限り、2以上の建設業の専任技術者を兼ねることができます。また、本社、本店等の専任技術者は、要件を満たせば、経営業務の管理責任者と兼ねることもできます。
                                    
営業所の専任技術者の特例として、当該営業所において請負契約が締結された建設工事であって、工事現場と営業所が近接し、当該営業所と常時連絡をとりうる体制にあり、所属建設業者と直接かつ恒常的な雇用関係にある者については、当該工事の専任を要しない(公共的な工事であれば4,000万円(建築一式工事は8,000万円)未満の工事)主任技術者になることができます。

以上により、少なくとも4,000万円(建築一式工事は8,000万円)以上の公共的な工事において、営業所の専任技術者が、当該工事の主任技術者又は監理技術者になることは建設業法違反となり、監督処分の対象となりますのでご注意ください。

令和2年建設業法改正 工事現場の技術者に関する規制の合理化

令和2年に建設業の改正が行われ、工事現場の技術者に関して下記2点の改正が行われました。詳細は、行政庁の公式情報をご確認ください。

(ⅰ)元請の監理技術者に関し、これを補佐する制度を創設し、技士補がいる場合は複数現場の兼任が容認されました。
(ⅱ)下請の主任技術者に関し、一定未満の工事金額等の要件を満たす場合は設置を不要化されました。