取引先と密接な関係性を築くため、契約に独占条項を入れようと思うけど・・・
独占条項には確かに利点もあるのですが、場合によっては会社の事業にとって致命的な負担となることもあります。
未来の姿をじっくり考え、慎重に判断しないといけないです。
独占条項(exclusive clause)とは
独占条項、英語でエクスクルーシブ条項とは、砕けた言い方をすると、
「なになにするのはあなただけよ」
「あなた以外はなになにしません」
という趣旨の条項です。
ビジネス契約における独占条項は様々ですが、例として以下のようなものがあります。
甲は、乙以外の第三者に本製品およびその類似製品を販売してはならない。
甲は、乙以外の第三者から本製品およびその類似製品を購入してはならない。
甲は、乙以外の第三者の製品を取り扱ってはならない。
甲は、乙以外の第三者に本サービスおよびその類似サービスを提供してはならない。
甲は、乙以外の第三者から本サービスおよびその類似サービスの提供を受けてはならない。
甲は、乙以外の第三者と本契約の開発と同様の開発を行ってはならない。
独占条項の危なさとそうなる原因
独占条項の危なさは、相手方と密接につながりすぎで、自己の自由がなくなるということにつきます。
これは多くの場合、契約締結当時の両当事者の関係、市場の状況、社会の状況が長く続くという予測の間違いからくるものです。
上記各例では独占されるのはすべて甲ですが、そのうち一番上の例で見て見ましょう。
「甲は、乙以外の第三者に本製品およびその類似製品を販売してはならない。」
甲の思い
「大量の注文が期待できる最大手の乙と契約できて光栄だ。当社も継続的に潤沢な受注が確保できで経営的に安泰だ。この契約の独占条項でほかの小手の販売先を失うとしても問題ない。」
乙の思い
「甲の製品は安価で品質もいいので、ライバル会社に流れるのを阻止できてよかった。」
3年後の現実
「期待していたように乙が注文をしてくれない。今回、ありがたいことに乙以外の第三者から本製品を大量に買いたいという引き合いがあった。しかし・・・受注できない。この条項のせいで・・・」
市場の状況や社会の状況当事者間の力関係のいずれも、時間の経過とともに変わっていくんだ、ということを前提に、この種の契約の独占条項を見ていく必要があるでしょう。
独占条項を提案されたときの対応方法
独占条項が入った契約書の提案を受けたとき、どう対処していけばいいでしょうか。
一番大切なのが、契約交渉時のこれからビジネスが始まるんだという高揚した気持ちを押さえて、やがて社会情勢や市場が変わったときにこの条項があることでどんなことが起こるんだろうということを、冷静に分析して検討することが大切です。
その際の考え方のポイントとして以下のようなものがあります。
- 当方だけでなく相手方も縛っている内容になっているか?
- 独占の期間は適正か?
- 独占の対象は明確になっているか?
- 独占解消の条件の明確化できないか?
以下、ことつずつ少し説明を加えます。
当方だけではなく相手方も縛っている内容になっているか?
当方が相手方に縛られるのであれば、相手方も当社にある程度しばられる契約でなければ、当方のメリットは薄まります。また、契約としてもアンバランスです。
事例で考えましょう。
「甲は、乙以外の第三者に本製品およびその類似製品を販売してはならない。」
という条項が入っているのに、乙が誰からでも類似製品を買えるとなると、甲にとっては非常に危ない契約と評価されます。
この場合は以下のような条項を入れるよう交渉すべきでしょう。
「乙は、甲以外の第三者から本製品およびその類似製品を購入してはならない。」
「乙は、自らまたは第三者に委託して本製品またはその類似製品の開発、製造をしてはならない。」
縛られる期間は適正か?
独占期間が適切かどうかという点も重要ポイントです。
期間の定めがない、つまり永久に独占関係が続くというのは要注意です。縛られる期間は、かならず有期にするとともに、適切な期間を十分考慮した方が良いでしょう。
独占の対象が明確になっているか?
上記例文で、「本製品およびその類似製品」の「類似製品」という規定が非常に波乱含みです。
本製品の仕様のどの部分がどこまで違えば類似製品から外れるのかというのは、まさしく読み手によって変わってくるし相対的です。
そして、実際に問題が発生したときの話し合いでは、その類似、非類似の論争はまずまとまらないでしょう。
したがって、契約締結の段階で類似非類似の基準をしっかり合意しておくべきです。
独占解消の条件を明確化できないか?
ある一定の条件が整うと、独占条項は解除されるということを契約の中に入れることができないか検討するべきです。
ある条件というのは、「両当事者が合意したら」という条件も考えられるが、それだと実際に問題が発生したときの協議で合意をするのは非常にハードルが高まるのは自明です。
したがって、一定の客観的な基準を設けるべきでしょう。
事例で見てみましょう。
「甲は、乙以外の第三者に本製品およびその類似製品を販売してはならない。」
という条項があった場合、たとえば次のような条項の追加を検討するのはいかがでしょうか。
「前項の規定は、乙の甲に対する本製品の月間発注台数が10台以下の月が2か月継続した場合、その後適用されない。」
独占禁止法などの法規制に注意
独占条項は場合によっては契約当事者の事業活動を強く制限する可能性のある条項です。
特に競争上強い立場にある者が弱い者に対してそのような条項を強いる場合、独占禁止法など法令上の問題となる場合があります。
独占条項の奥深さがよーーーーーくわかりました。