契約交渉でも、相手の顔を立てることを忘れないで

契約交渉術
どてらいさん
どてらいさん

契約交渉で相手の顔を立てることが必要ですか?

すぎやん
すぎやん

契約交渉の後のことを考えると、顔を立てるって大事だと思いますよ。

顔を立てる

「顔を立てる」とは、相手方の「面目が保たれるようにする。」「名誉が傷つかないようにする」ということです。顔を「面子(めんつ)」と考えればよいでしょう。

契約交渉も人間同士が行うことですので、相手方の顔を立てることは、非常に大事な考慮要素です。

契約交渉はそれが終わりではない

困難な契約交渉にのめりこむと、契約書を結ぶことがゴールだと考えてしまうことがあります。

お互いにちょっとでも自分に有利な契約書になるように、強引に、時には相手方を陥れるような交渉戦術を駆使して激しくぶつかり合って、互いにノーガードでパンチを応酬し、精神的に疲弊するという状態になってしまうこともあります。

しかし、そんなときに改めて気づくべきは、契約交渉の後に、ビジネスや取引があることです。

一体何のために契約交渉をしているのか。契約交渉とその成果である契約書は、当事者間のビジネスを両者に利益をもたらせつつ安定的に長く行うための準備だということを思い出さなくてはいけません。

目的を見失った激しい契約交渉の段階で、相手の面子を汚すようなことをしてしまうと、汚されたと感じた当事者はよっぽど割り切りの良い者でない限り、後のビジネスがうまくいくはずがありません。

ちょっと考えたらわかることですが、実際のビジネスの世界では、相手の顔を立てず、自らの利益の追求だけに着目した契約交渉を行った結果、当事者間に遺恨が残って、その後のビジネスが不成功に終わったという事例は少なくありません。

相手方の顔を立てるということは、契約交渉とビジネスの成功のための基本的行動動作だと考えて良いでしょう。

具体的な顔の立て方

契約交渉における相手方の顔の立て方について、いくつか見て見ましょう。

例とするには、厳密には少々違うかもしれませんがご容赦ください。

相手方の意見を聞く。聞き出す。受け入れて良い部分は受け入れる。

相手方の主張をしっかり聞く。
しっかり聞くと、相手方の主張の中に、なるほどと感心できる部分とか、受けてれても良い部分が必ず見つかるはずです。
そのような部分が見つかったときには、相手のアイデアを褒めたたえ、共感した旨を伝える。
そうすると相手方としては面子が維持され、結果的に契約交渉がうまくまとまることになります。

相手方の顔を立てて、効果的な契約交渉をするために大事なことは、相手方に主張を述べる機会を与える。相手方から進んで主張を述べない場合は、相手方への質問を通じて相手方の主張を聞き出すことが必要です。

相手方を巻き込む。共同体意識。

ある討論番組を見ていて、元大阪府知事の橋下徹さんが、「〇〇さん(討論相手)がおっしゃるように…」と前置きをしてご自身の意見を発言されてることが多いことに気づきました。

こう言われた〇〇さんの心境はどうでしょう。多少自身の主張が橋下さんの主張と違っていても、「自分の意見に橋下さんが同調してくれてうれしい。」と感じているのではないでしょうか。
一種の「顔が立った」状態です。

そうなると、その後は、橋下さんの意見への反対論は言いにくい状態になって、むしろ橋下さんの意見と同調した意見を発言するようになることもあります。
さすが、弁護士として多くの交渉経験をお持ちの橋下さんの交渉術だなと感じました。

交渉において、相手方を自分の方に引き込み、両当事者が一つの共同体になって個々の交渉課題に一緒になって取り組んでいくという形になると、その契約交渉とその後のビジネスは、双方当事者にとって利益をもたらす良いものになっていくはずです。

契約交渉の当事者が一つの共同体のようになるには、互いを尊重し、顔を立てるということが不可欠です。

振り上げた拳を収める場所を用意する

「顔を立てる」ということでいうと、相手方が振り上げた拳を収める場所を用意する、ということも効果的です。

契約交渉は、まず準備として自社内で関係者の意見を聴取して、最善と考える提案を用意して、意気揚々と相手方にぶつかるということが多いです。
そこで交渉がスタートするのですが、その交渉の結果、せっかく熟慮して用意した提案がすべて受け入れられず、自社に戻って関係者に説明する場面を想像してください。
「なんだ、もっとしっかり交渉しろよ。」「お前、交渉力がないな」という批判も覚悟しなくてはなりません。
おそらくそこには「面子を汚された」という感情しかないでしょう。そういった負の感情を頂いたまま締結された契約とか、ビジネスが良いものになるとはちょっと考えられません。

相手方の顔を立てて、採用できる提案は採用する。振り上げた拳を収める場所を用意することにより、納得性のある契約書になり、ビジネスも成功にもつながっていくと考えます。

どてらいさん
どてらいさん

よくわかります。契約交渉ってとても人間的な営みなんですね。

すぎやん
すぎやん

ビジネスも契約交渉も、結局は感情を持った人間同士の営みなんですね。