契約交渉にも体力は必要です

契約交渉術
どてらいさん
どてらいさん

えっ!

契約交渉にも体力が必要なんですか??

すぎやん
すぎやん

心の体力と体の体力の両方が必要ですね。

特に心の忍耐力と切り替え力が求められます。

契約交渉は体力勝負…特に、心の体力。

契約交渉には体力が必要…だと思います。
それは肉体的な体力もそうですが、特に心の体力の面で以下のような強さが必要だと考えています。

契約交渉に求められる「心の体力」

  • 相手の挑発にカッとなって反発しない、心のしなやかさ
  • 環境の変化に影響を受けない、心の平静さ
  • 相手の意見をよく聞いてプラス思考で妥協点を見出そうとする、心の広さ
  • 失敗やロスの経験を後に引きずらず、切り替えが早い、心のしたたかさ

心の体力の鍛え方

では、良い契約交渉者になるための心の体力の鍛え方について考えてみましょう。

実は、心の体力は、生まれてから現在までの年月の間に、その人と接した人との会話、やり取りなどの積み重ねで形づけられるものですから、そう簡単に鍛えて強くなるというものでないかもしれません。
いま巷では、心の鍛え方や心の制御方法(マインドフルネス)に関する研究が多く行われており、様々な方法が提案されています。書籍やネットでも様々な情報が提供されているので、よく吟味をして、自分に合った方法で、心の体力を鍛えてみるといいと思います。

すぎやんの心の鍛え方

私すぎやんの話ですが、すぎやん自身はもともと心はそんなに強くないと自覚しています。
企業法務実務の経験の中で、様々な契約交渉に関わる中で、心の体力が奪われて、疲弊して追い込まれるようなことも何度もありました。

そのような時にすぎやんが心がけたのは、「開き直り」という形のマインドのリセットです。
「山よりでっかい獅子は出ん」という言葉があります。これは私が子供のころ毎朝聞いていたラジオ番組のパーソナリティがよく言っていた言葉です。
「山に潜んでいる獅子(猪/いのしし)は、実際には見たことが無いが想像すると大きくて獰猛で怖くてしかたがないけれど、実際の大きさは山の大きさより大きいことはない。」という意味です。「得体を知らない物や、未経験の事柄は、いろいろ考えて想像するだけだと、怖くて恐ろしくて怖気づいてしまうこともあるが、勇気をもって実際にあたってみたら、意外にも自分の力で対処できる物や事柄であることが多い。だからとりあえずやってみな!!」という勇気を与える言葉だととらえています。

契約交渉で心の体力が消耗して、心が折れそうになった時には、この言葉を思いだして、「別に交渉が失敗しても命までとられるわけじゃないし…、やれることをやるだけやろう。」と思って切り替えて、開き直って何とか乗り越えてきました。

胆力

胆力という言葉があります。
「ものごとに対して怖がったり怖気づいたりしない、どっしりした心、度胸のこと」を言います。

契約交渉で一番大事なのは、この胆力です。この胆力というのは、先天性の部分はあるものの、鍛える方法はあります。巷にも胆力の鍛え方に関する情報はあふれています。自分流の胆力の鍛え方を見つけて、取り組んでみてはいかがでしょうか?

契約交渉には肉体的な体力も実は必要

心の体力のお話が続きましたが、契約交渉における肉体的体力に関連して、すぎやんの法務実務経験の中でのエピソードをご紹介します。

これは、今から10年以上前にあったアメリカに出張して行った現地取引先との契約交渉の話です。
当方は、ビジネス部門の英語が堪能な責任者と担当者、それに法務部門の英語がおぼつかないすぎやんの3名の交渉チームでアメリカに乗り込みました。
当方が売り手で先方が買い手であり、交渉ステータスとしては当方が弱者という、敗色濃厚のアウエー戦のパターンの契約交渉でした。
現地では、先方は、ビジネスの人と法務の人が数名、当方の人数の3倍程度の人数で当方チームを相手にしてくれました。

5日間程度の集中交渉でしたが、すべて交渉の打合せは連日未明まで続きました。
「わざわざ日本から来てくれてありがとう。君たちはいつ日本に帰るの?それだったら時間がないので、とことんやりましょう。」という感じで打ち合わせに応じてきます。
交渉は朝の9時からで、数回の小休憩とランチ休憩がありましたが、ほとんどぶっ通しで続きます。
夜の7時ごろになると夜食のサンドウィッチをごちそうしてくれます。さしておいしくないサンドウィッチを相手方と雑談をしながら食べて、「じゃあ続きは明日ね。」ということになると思いきや甘かった。「さあ、再開しましょ。」と言われて交渉再開。時差ボケもあって当方チームの何人かがうつらうつらし始めた午前1時過ぎにようやく解放です。
深夜の異国の道路をタクシーに乗ってホテルに戻ります。そしてホテルに戻るとすぐ寝るわけでもなく、交渉チームで作戦会議です。その日の成果をまとめて、留保した事項は日本本社に連絡して指示を仰ぎつつ、翌日の交渉の準備を行います。部屋に戻ってシャワーをあびてベッドに入るのが4時ごろ・・・。そんなほぼ徹夜の日々が4日ほど続きました。
先方の法務の担当者はいずれも女性の若い弁護士でしたが、ものすごくタフです。日付がかわってても、「では次のセクションを議論しましょう。」とアグレッシブに挑んできます。3日目以降になると当方は本当にくたくたです。まさしく契約交渉って肉体的な体力がいるなと思った経験です。

この契約交渉は、アメリカ企業の契約に対する考え方、契約交渉への取り組む姿勢を直接深く体感して学ぶことができた、非常に貴重な経験でした。
これは10年以上前の話で、今ではこんな契約交渉はしてないと思います。ただ確かに言えるのは、契約交渉にも肉体的体力は必要だということと、欧米人の契約に対する熱意は半端ないということです。

どてらいさん
どてらいさん

アメリカでの逸話、すごいですね。

僕もハードな交渉に対応できるよう、毎日ジムに行って鍛えますわ。

すぎやん
すぎやん

いえいえ。おじさんの不幸ネタの昔話です。

あまり気に留めなくていいですよ。