建設業の許可要件 2 専任の技術者がいること(資格・実務経験等を有する技術者の配置)

建設業法

法律の規定

建設業法第7条(一部省略しています)
国土交通大臣又は都道府県知事は、許可を受けようとする者が次に掲げる基準に適合していると認めるときでなければ、許可をしてはならない。
一 (略)
二 その営業所ごとに、次のいずれかに該当する者で専任のものを置く者であること。
イ 許可を受けようとする建設業に係る建設工事に関し学校教育法による高等学校若しくは中等教育学校を卒業した後五年以上又は同法による大学若しくは高等専門学校を卒業した(同法による専門職大学の前期課程を修了した場合を含む。)後三年以上実務の経験を有する者で在学中に国土交通省令で定める学科を修めたもの
ロ 許可を受けようとする建設業に係る建設工事に関し十年以上実務の経験を有する者
ハ 国土交通大臣がイ又はロに掲げる者と同等以上の知識及び技術又は技能を有するものと認定した者

許可要件の内容(専任技術者)

専任技術者の配置

建設工事に関する請負契約の適正な締結、履行を確保するためには、建設工事についての専門知識が必要です。請負契約に関する見積り、入札、契約締結等の業務の中心は各営業所にあることから、建設業を営む全ての営業所ごとに許可を受けようとする建設業に関する一定の資格又は経験を有する技術者を専任で配置することが必要です。

ポイントは、「技術者が有すべき一定の資格または経験」の中身と、「営業所ごとに専任で配置すること」の意味になるかと思います。

順序が逆転しますが、一つ一つ説明します。

営業所ごとに専任で配置することの意味

「専任」とは・ ・ ・
その営業所に常勤(テレワークを含む。)して専らその職務に従事することをいいます。従って、雇用契約等により事業主体と継続的な関係を有し、休日その他勤務を要しない日を除き、通常の勤務時間中はその営業所に勤務し得る者でなければなりません。そのため、営業所の専任技術者については、当該営業所の常勤の者の中から選ぶこととなります。

次のような場合は「専任」と認められません。

  • 技術者の住所が勤務を要する営業所の所在地から著しく遠距離にあり、常識上通勤が不可能な者
  • 他の営業所(他の建設業者の営業所を含む。)において専任を要する者
  • 建築士事務所を管理する建築士、専任の宅地建物取引士等、他の法令により特定の事務所等において専任を要することとされている者(建設業において専任を要する営業所が他の法令により、専任を要する事務所等と兼ねている場合において、その事務所等において専任を要する者を除く。)
  • 他に個人営業を行っている者、他の法人の常勤役員である者等、他の営業等について、専任に近い状態にあると認められる者

「営業所における専任技術者」は、下記特例に該当する場合を除き、工事現場の主任技術者又は監理技術者になることはできません。

特例として、「営業所における専任技術者」が工事現場の主任技術者等を兼務するためには、次の3つの要件をすべて満たす必要があります。
① 当該営業所において、請負契約が締結された建設工事であること。
② 工事現場の職務に従事しながら、実質的に営業所の職務にも従事し得る程度に工事現場と営業所が近接し、当該営業所との間で常時連絡をとり得る体制にあること。
③ 当該建設工事が、主任技術者等の工事現場への専任を要する工事で、請負金額が4,000万円(建築一式工事は、8,000万円)以上でないこと。

専任技術者が有すべき一定の資格または経験要件

許可を受けようとする建設業が一般建設業であるか特定建設業であるか、またその業種により、必要となる技術資格要件の内容が異なります。営業所の専任技術者となり得る技術資格要件の概要は以下のとおりです。(実際の学校別指定学科や国家資格等は、行政庁の公表情報をご確認ください)

一般建設業における専任技術者(概要)

(イ) 学校の指定学科卒業+一定期間の実務経験者
   高校卒(指定学科) +5年以上の実務経験
   大学・短大・高専卒(指定学科) +3年以上の実務経験

  指定学科は、建設業の業種(工事の種類)の別に細かく定められていますので、行政庁の公表情報をご確認ください。 
  例 土木工事業:土木工学科
    建築工事業:建築学科
    電気工事業:電気工学科
    機械器具設置工事業:機械工学科等

(ロ)10年以上の実務経験者
   普通科高校や文系学部大学の卒業者等、指定学科の卒業がないとき。

(ハ)国家資格者
   建設業の種別(工事の種類)の別に、どの国家資格者であれば専任技術者になり得るかの表が行政庁により公表されていますので、ご確認ください。(資格者であってもさらに実務経験を要求しているものもあります。)
  例 建築工事業:1級、2級建築施工管理技士、1級、2級建築士
    土木工事業:1級、2級土木施工管理技士等
    電気工事業:1級、2級電気工事施工管理技士等
    管工事業 :1級、2級管工事施工管理技士等

特定建設業における専任技術者(概要)

(イ)1級の国家資格者等
   建設業の種別(工事の種類)の別に、どの国家資格者であれば専任技術者になり得るかの表が行政庁により公表されていますので、ご確認ください。
  例 建築工事業:1級建築施工管理技士、1級建築士
    土木工事業:1級土木施工管理技士等
    電気工事業:1級電気工事施工管理技士等
    管工事業 :1級管工事施工管理技士等

(ロ)一般建築業の要件+指導監督的実務経験
   指導監督的実務経験とは、元請として4,500万円以上の工事について、2年(正味で24月)以上、建設工事の設計、施工の全般にわたって工事現場主任や現場監督者のような立場で工事の技術面を総合的に指導監督した経験を言います。
但し、この(ロ)の要件は、指定建設業7業種(土、建、電、管、鋼、舗、園)については認められていませんので、当該7業種については(イ)の1級資格者が不可欠です。

実態としては、この(ロ)の要件は適用が非常に厳しい条件であり、機械器具設置工事業のみで適用されている状況です。

(ハ)国交大臣が認定した者(大臣特認
   海外での実務経験について個別審査を受け認定された者など。
   現在、事実上、認められることは極めて少ない。

専任技術者の確認資料

学歴や資格保有の証明は、それぞれ公式な証明書があるので比較的容易ですが、問題は実務経験や指導監督的実務経験の証明です。特に、一般建設業の場合で該当学科の学歴がない場合には、許可を取りたい工事の実務経験が10年間あることを証明しなくてはなりません。

一般建設業の場合の実務経験の内容の確認

工事の契約書、注文書、請書、請求書、内訳、通帳の入金記録等の書類で、許可を申請する業種(工事)の実務をやってきたことを証明します。期間は原則10年分(学歴と併用する場合はその短縮された期間分)の書類です。
よくある間違いのケースは、許可を取りたい業種とは異なる工事の注文書だった場合や、工事と関係ない業務委託の契約書だったりすることです。また、「○〇邸新築工事」としか書かれていない契約書の場合、どの工事を経験したのかわからないので、見積書、工程表、現場写真などの書類で補足して工事内容を特定します。
なお、証明したい業種について、確認できた工事と次の工事との期間が12か月を超えて空かなければ連続した期間、経験があることとみなされます。これは大阪府知事許可の場合で、他の都道府県では異なった運用がされていることがありますのでご注意ください。

専任技術者の候補者が申請者と異なる会社(他社)で勤務されていた場合で、その他社での実務経験を今回の申請で算入したいときは、当該他社に契約書、注文書等の書類を借りてこなくてはなりません。

なお、過去に実務経験で専任技術者として証明されている者の場合や建設業の許可を受けていた建設業者(現在も引き続き建設業の許可を受けている者を含む。)において実務経験で専任技術者として証明されていない者の場合には、建設業許可申請書等別の書類で確認可能です。

特定建設業の場合の指導監督的実務経験の内容の確認

証明者(証明する会社または個人事業主)での、工事の実績を記載した全ての工事について、元請・工期・工事名・工事内容・請負金額(4,500万円以上)を確認できる書類が必要です。
申請業種についての工事の契約書・注文書・請求書・内訳書等の書類で確認します。
指導監督的実務経験の経験期間は、各工事の工期の通算が2年(24カ月)以上必要です。

過去に指導監督的実務経験が必要な専任技術者として証明されている者の場合は、建設業許可申請書等異なる資料で確認可能です。

常勤性の確認(一般建設業、特定建設業共通で必要な確認です。)

経験期間の在籍が確認できる書類が必要です。
但し、証明者(専任技術者の候補者)と申請者が同一の場合または過去に建設業者から証明を受けている者については原則不要です。

証明者(専任技術者の候補者)が個人事業主の場合、その者の所得税の確定申告書(10年分など証明が必要な期間分)で常勤性を確認します。
確定申告書には税務署の受付印または電子申告の受信通知が必要です。

証明者(専任技術者の候補者)が役員や被雇用者の場合、(年金の)被保険者記録照会回答票、雇用保険被保険者証、離職票などで常勤性を確認します。

建設業許可のネックの一つ

専任技術者の適格性の確認資料(とりわけ実務経験証明資料)の収集が、経管の確認書類と並ぶ建設業許可申請の大きなネックであるのは確かです。

手引きに書かれた書類が社内で簡単に見つかればいいのですが、最大10年もの長期間にわたって各種の書類を整理して保管しておくというのは、以前から将来は建設業許可をとることを意識しているのでなければ、なかなか難しいかもしれません。

また、他社で勤務していた間の実務経験を今回の申請の実務経験として算入したい場合に、当該他社が廃業していたり、あるいは独立、転職時の経緯等の事情から、当該他社に書類提出の協力をもらえない(依頼できない)ということもあるでしょう。

でも、見つからなくても簡単にあきらめないでください。お世話になっている税理士先生が書類を保有していたり、契約書だと契約相手方が保有していたり、確定申告書だと税務署に保管されたりなどする可能性もあります。また、手引きには記載されていない資料で証明できる可能性もゼロではありません。

もちろんもともとありもしない書類を偽造して申請するのは虚偽申請となり、厳しく罰せられるので絶対にやるべきではないですが、証明したいことが事実だと確信されているなら、あきらめずに行政書士等に相談されることをお勧めします。