工事経歴書と直3の書き方

建設業法

決算変更届で必要になる「工事経歴書」および「直前3年の各事業年度における工事施工金額」(以下、直3と言います)の作成方法の概略を確認します。ここでは大阪府での運用を説明しますが、主管庁によって運用基準が微妙に異なる場合がありますので、該当の行政庁の発信情報をご確認ください。

金額記載の考え方

金額の単位

決算変更届、経営事項審査とも千円単位で作成する。
千円未満は切り捨てる(四捨五入ではない)。
従って、各数値の合計と合計欄(決算書の数値)は合致しなくてもよい。但し、直3の様式は例外(後述します)。

消費税の処理

許可申請、決算変更届における消費税の扱い
 税抜、税込どちらでもよい。したがって、転記元になる決算書の処理方法に合わせてよい。但し、決算変更届で提出する各書類は税抜か税込かどちらかで統一すること。

なお、経営事項審査では原則として「税抜」なので、経営事項審査を受ける建設業者は原則として税抜処理する。

経営事項審査における消費税の扱い
課税業者は税抜処理、免税業者は税込処理

上記をまとめると次の表のとおりとなります。

経営事項審査を受審する場合(または未定の場合)

課税/免税工事経歴書直3財務諸表備考
課税業者税抜税抜税抜
免税業者税抜税抜税込

経営事項審査を受審しない場合(受審未定の場合は受審するの内容で作成)

課税/免税工事経歴書直3財務諸表備考
課税業者税抜・税込
どちらも可
税抜・税込
どちらも可
税抜・税込
どちらも可
各書類で
統一する
免税業者税抜・税込
どちらも可
税抜・税込
どちらも可
税抜・税込
どちらも可
各書類で
統一する

工事経歴書の書き方

決算変更届の工事経歴書と経営事項審査の工事経歴書は別基準で作成しなくてはなりません。
許可のある業種のみ作成する。許可のない業種の実績は「その他工事」にまとめて、工事経歴書は不要。
なお、実態が工事であれば、契約書の名称が工事請負契約でなくても工事扱いができる。

決算変更届用工事経歴書

下記は、大阪府の工事経歴書式です。小さくて見えづらいと思います。必要に応じ、行政庁のホームページからダウンロードしてください。

閲覧対象書類になるので、個人が特定されるような情報は書かないこと。

・許可がある建設工事の種類別に、元請・下請に関わらず金額順に主な工事を記載する(記載件数の基準はない)。

・経営事項検査を受ける業者は経営事項審査用工事経歴書を作成添付する(わざわざ2種類作らなくていい)。(書式は、決算変更届用と同じだが、個人情報保護措置は必要。)

・記載項目とポイント

注文者決算変更届出業者に直接工事を発注した施主、元請、下請名。
個人の場合は特定できないようA氏、B氏などと記載。
元請又は下請の別施主から直受注かそうでないか。
JVの別JV(建設共同企業体)であれば出資割合も記載。
工事名施工場所、建物構造物名+工事内容
個人住宅の場合、個人情報保護のためA氏邸などと記載。
工事現場の場所都道府県+市区町村+(政令市は区名まで)
配置技術者現場配置技術者氏名を記載。
直接的かつ恒常的な雇用関係があること(出向・派遣は不可)。
現場専任が求められる現場なのに兼任とか、
下請の技術者の氏名記載などは問題あり。
請負代金の額工期が決算期をまたぐ場合、上段に請負総額、
下段にカッコ書きで当期完成工事高を記載する。
工期
小計当該用紙の合計件数と額を記載。
「うち元請工事」欄も同様。
合計当該業種の合計件数と額を記載。
 …直3の業種別完成工事合計と一致させる。
「うち元請工事」欄も同様。
 …直3の業種別元請(官公庁+民間)完成
 工事合計と一致させる。

経営事項審査用工事経歴書

非閲覧対象書類です。
消費税については上述の通り。
非閲覧対象書類のため個人情報保護の考慮は不要。注文者、工事名を正確に契約書等と照合できるよう記載する。

記載すべき工事と記載の順番について
A 原則
 a 年間の全工事を業種ごとに分類する。
 b 業種ごとに工事を元請工事と下請工事に分類し、それぞれの合計額を計算する。
 c 業種ごとに元請工事を金額順に、当該業種の元請完成工事高の7割を超えるところまで記載する。
 d 業種ごとに元請工事の残りと下請工事を金額順に、当該業種の完成工事高の7割を超えるところまで記載する。

B 軽微な工事(建築一式:税込1,500万円未満、その他工事:税込500万円未満)が多い場合
 a Aの原則通り記載し、軽微な工事を10件記載したら、残りの軽微な工事は省略できる。(軽微な工事でない工事は全件記載すること。)

直前3年の各事業年度における工事施工金額(直3)の作成

下記は、大阪府の直3の書式です。小さくて見えづらいと思います。必要に応じ、行政庁のホームページからダウンロードしてください。

工事経歴書に記載した数値と一致すべき箇所
①工事経歴書の業種ごとの元請・下請工事完成工事高と完成工事高合計額を、直3の元請工事完成工事高(公共+民間)、下請完成工事高と完成工事高合計額欄に記載する。
②業種ごとの完成工事高合計額の総合計額を、財務諸表・損益計算書の完成工事高に一致させる。

経営事項審査の業種ごとの完成工事高、元請完成工事高はこの用紙に記載された金額で決定されるので、決算書記載の完成工事高と一致するよう調整する。

許可業種以外の業種の実績は、「その他」工事欄に記載する。