損害賠償責任がきつすぎてあぶない

あぶない契約書
どてらいさん
どてらいさん

契約違反して相手に迷惑をかけたら損害賠償しなくてはならないことは理解するが・・・。

すぎやん
すぎやん

想定される損害額よりも過大な責任を負わされる条文になっていることがあるので、

契約書を注意して確認しないといけません。

契約違反の損害賠償責任

自分が契約に違反して相手方に損害を与えたらその賠償をしないといけないというのは、誰もが理解できるでしょう。
契約書にも、下記のような条文が入っていることが多いです。

甲および乙は、相手方が本契約に違背したことにより自己が被った損害の賠償を請求することができる。

ただ、中には当事者のうちの片方の当事者の損害賠償責任だけが契約書に記載されているケースがあります(下記サンプル参照)。

甲は、乙が本契約に違反したことにより被った損害の賠償を乙に対して請求することができる。

このような条項は受け取った契約書ドラフトにしれっと書かれてあり、契約書をじっくり確認しないと見落としがちです。もし甲も乙も同様に契約違反をして相手方に損害を与える可能性があるのなら、かかる文言は不平等なので、是正するよう交渉するべきでしょう。

問題は賠償すべき損害の範囲です

損害賠償の条項で最も議論となるのが賠償すべき損害の範囲に関する論点です。

この論点については、学術的な研究対象となるほどの深淵なテーマであり、特別損害、間接損害、付随的損害、拡大損害などなど多種多様の用語もあって、考え方も様々です。
すぎやんはこの論点で深い議論ができるほどの見識はありませんが、契約書の作成審査業務を数多く経験してきた中で様々な損害範囲論議に接してきました。

議論においては、契約が射程している取引の内容、相手方との力関係、相手方の資力、契約違反の発生可能性、付保保険でカバーが可能かなどなど様々な事情を考慮しながら交渉していくことになりますが、場合によってはデッドロックになる場合もあります。

そのようなときの落としどころの一つとして、民法416条の考え方で契約しませんかという提案があります。

【ご参考】民法第416条(損害賠償の範囲)

  1. 債務の不履行に対する損害賠償の請求は、これによって通常生ずべき損害の賠償をさせることをその目的とする。
  2. 特別の事情によって生じた損害であっても、当事者がその事情を予見すべきであったときは、債権者は、その賠償を請求することができる。

この民法の規定は任意規定であり、当事者間でこれと別の合意をすることは可能です。
しかし、特に相手方が日本企業の場合、「民法の基準に従うならまあ合理的か」と合意に至ることもあります。

リキダメ条項

リキダメ条項とは、英語ではLiquidated Damages Clauseで、「損害賠償額の予定」と呼ばれるものです。
これば、実際に契約違反が生じたときに、損害の範囲と賠償額を算出して合意することは困難になることが予想されるため、あらかじめこの違反があったらいくら払うと定めておく条項のことを言います。

多くの場合、その額は過大な金額になっているので、そのような条項を提案され場合は十分注意して検討する必要があります。

【リキダメ条項の一例】
甲による完成品納入が別途合意した納期に遅延した場合、甲は、遅延一日当たり10万円の違約金を乙に支払うものとする。

あと、損害賠償額の上限を決めることも多いですが、それについては別のコラムで述べます。