契約交渉での期間管理は大事ですか?
はい。良いビジネス契約交渉をするために、最も大事な要素です。
契約交渉の期間管理
契約交渉の期間というのは、いつから契約交渉を開始していつまでに終了するかの期間をいいます。
なかでも特に重要なのが終了時期です。
ここで契約交渉の終了というのは、ほぼすべてのケースで契約の締結という形になりますが、契約を締結しないことを合意する形になることもありえます。
ほぼすべての契約交渉者は、最終的にどんな形であれ契約を締結することを念頭に置いており、それは大事なことではありますが、BATNAとして契約交渉が決裂したときにはどうするかという点も頭の片隅において交渉に当たることが必要です。
それがないと契約交渉期間の終盤における「期限までに何とか契約を締結しないと大変なことになる」というプレッシャーに耐えられず、不本意な契約書に合意してしまい後々後悔することになるからです。
事前協議における契約交渉期間の設定
実際には、契約交渉の冒頭で契約当事者間で交渉期間について協議して合意することが多いです。
いつまでには契約締結をして、いつまでにはビジネスを開始しましょう、といった合意です。
この契約交渉期間の協議というのは、単なるスケジュール調整以上の深い意味があることを意識しておくべきです。
それは、この協議で決定された交渉期間の終期が当事者にとってどういう意味を持っているかによって、交渉における立ち位置が変わっていくからです。
「契約を締結して開始されるビジネスで得る利益が、自社の経営計画に組み入れられており、その時期がずれたり、結局契約が締結できないとなると、計画利益に穴が開く。」 という場合と、
「とくに利益の計画化はされておらず、契約締結して利益を得られたら、計画の上積み要素になる。」という場合とでは、契約交渉期間中での交渉態度に差が出てくることは明らかです。
したがって、契約交渉期間の協議時に上記のような自社の内部事情を相手方にさらけ出さない、あるいは悟られないようにするというのが、大事になってきます。
もちろん両当事者とも、それぞれが労力という経営資源を投下して契約交渉をするわけですから、契約書を締結してビジネスを開始したいという点では一致しているはずです。
問題は、いつまでに契約を締結しなければならないということだけに重心がかかりすぎると、交渉上は不利な方に働くことが多いです。
事実上そういう状態が内部的に生じてくることは避けられませんが、その内心を相手方に見せてしまうと、契約交渉は不利になります。良く言われる、足元を見られて交渉するという形です。
契約交渉期間終盤での攻防
契約締結欲求の違いが顕著に表れるのが契約交渉期間の終盤です。
相手方の締結欲求が高いことを察した場合は、じらし作戦、牛歩戦術で譲歩を引き出すことができますし、
速攻作戦で当方の要求を受け入れさせることもできます。
そんなこと言っても、「いつ締結されるかわからないようでは契約交渉なんてできないよ」という声が聞こえてきそうです。
確かにそうです。
「不利な内容で契約締結をしてでも期限までにビジネスを開始する」か、
「期限が多少ずれても時間をかけて有利な内容で契約書を締結してビジネスを開始する」か、プロコン分析をして最後は経営判断をすることになります。
すぎやんの経験上の感触では、多くの日本のビジネス経営者はせっかちの傾向があり、前者を選択することが多いようです。しかし、長期的な観点で考えると、後者の選択も立派な経営判断であることを認識するべきでしょう。
確かに。いついつまでに契約しなくてはならないという確定目標があると、戦略的な契約交渉がしづらいですね。
とはいえ、現実には「いつまでに契約しないと赤字になる。」とか、「もたもたしてると他社に契約を取られてしまう。」という状況が大半かもしれません。極力その状況を相手方に見せないことや、感づかれないようにすることが、交渉態度として大切なんだと思います。