秘密保持契約主要条項5 秘密保持義務の対象から除外される情報に関する規定

秘密保持契約の主要条項

秘密保持契約の主要条項解説シリーズ第5回は、秘密保持義務の対象から除外される情報に関する規定です。

秘密保持義務の対象から除外される情報のサンプル

前項の規定にかかわらず、次の各号の一に該当するものは、秘密情報に含まれないものとする。
(1)公知・公用のもの。
(2)開示を受けた後、自己の責によらずに公知・公用となったもの。
(3)開示を受けた際、既に自ら所有していたもの。
(4)正当な権限を有する第三者から秘密保持義務を負うことなしに入手したもの。
(5)開示を受けた情報とは関係なく、独自に創出したことを立証し得るもの。

いくら「秘密である旨の明示」を施したうえで開示された情報であっても、それを全部秘密情報として扱うべきではないということは容易に想像できるでしょう。そこで、情報の内容から判断して秘密保持義務の対象から除外される情報の規定を置いています。

すぎやん
すぎやん

開示者の指定したものを全て秘密情報の扱いをすると、目的が達成できないこともあり得ます。その対処の条項ですね。

秘密保持義務の対象から除外される情報に関する規定の内容

秘密保持義務の対象から除外される情報として規定されるのは、基本的に以下の5パターンです。

(1)公知・公用のもの。
(2)開示を受けた後、自己の責によらずに公知・公用となったもの。
(3)開示を受けた際、既に自ら所有していたもの。
(4)正当な権限を有する第三者から秘密保持義務を負うことなしに入手したもの。
(5)開示を受けた情報とは関係なく、独自に創出したことを立証し得るもの。

公知・公用のもの。

開示を受けた時点ですでに公(おおやけ)に知られていたり、公に用いられている情報は秘密情報には該当しないとされています。新聞や雑誌に掲載されている情報とか、市販商品に関する情報等がそれにあたります。

開示を受けた後、自己の責によらずに公知・公用になったもの

開示を受けた後に新聞や雑誌で公表された情報とか、市販開始された新商品に関する情報とかがそれにあたります。

開示を受けた後、自己の責によらずに公知・公用になったもの

説明不要でしょうが、「その情報なら前から知ってたよ」という情報がそれにあたります。

正当な権限を有する第三者から秘密保持義務を負うことなしに入手したもの

秘密保持契約の相手側以外の者(正当権限者)から秘密保持義務を負うことなしに入手した情報は、もはや世間的観点では秘密ではないですよねという観点から除外情報とされています。

開示を受けた後、秘密情報とは関係なく、独自に創出したことを立証し得るもの。

開示を受けた情報を参照せずに自分が自力で創出した情報は秘密情報に該当しないとされています。

すぎやん
すぎやん

この5点は、まとまりとして定型的に規定されていることが多いです。

秘密保持義務の対象から除外される情報に関する規定のチェックポイント

サンプルに挙げた5項目の除外については、多少の表現の差異はありますが、概ねどの秘密保持契約でも含まれていて、それほど議論になることはありません。

これを実際に運用するうえで問題になるのが、これら除外条項に該当することを立証責任が情報の受領者にあるということと、実際の証明方法は、なかなかハードルが高いということです。

とくに、開示された情報と関係なく独自に創出したことの立証とか、開示を受ける前から知っていたことの立証をどのような方法で行うか。
いわゆる情報のファイヤーウォールと言われる、情報を見る部門(担当者)と独自創出する部門(担当者)とを現実に分離する体制とか、研究開発の時期的記録をしっかり管理することなどが必要です。しかし、それぞれの会社の事情によっては、ファイヤーウォールを作る体制的な余裕がない場合もあるかと思われます。

なによりも漏洩したとの疑いがもたれないように、受領した秘密情報を厳格に管理するということが基本になります。

どてらいさん
どてらいさん

公知公用の事実の立証は、インターネットなどの調査でイメージできますが、独自創作の立証については、自分自身あらかじめ手を打っておかないといけませんね。

すぎやん事務所
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