今度、シンガポールのお客様と秘密保持契約を結ぶことになったんだけど。海外のお客様は初めてなので、どうしたらいいか教えて欲しいな。
どてらいさんもいよいよ海外進出ですか。おめでとうございます。
海外のお客様とは、英語で書かれた国際秘密保持契約を結ぶ必要がありますね。
なるほど。ということは、こないだ締結した日本語の国内用秘密保持契約を翻訳ソフトで英訳したらいいんですね。
あ、そうは簡単にいかなくて・・・・。国内用秘密保持契約を英語に直訳しただけでは、不完全なんですよ。
国際秘密保持契約の超入門のところを一度ご説明しますね。
国際秘密保持契約は日本語の秘密保持契約の機械翻訳では作れません
国際秘密保持契約は、日本国内用の秘密保持契約と大きく異なります。全く別物なので、機械的な翻訳ではなく、一から英語で作成しなければならないレベルだと考えた方がいいと思います。
秘密保持契約は英語で”Non-Disclosure Agreement”といい、NDAと略します。
ここでは、国内秘密保持契約と国際秘密保持契約の違いの基本的な部分についてご説明します。
国際契約(英文契約)独特の構成に基づき作成されている。
秘密保持契約に限った話ではないですが、英文国際契約書はおおよそ以下のような構成で作成されています。
頭文 | 契約の当事者が定義されています。 当事者(法人)の設立準拠法が記載されていることが多い。 |
前文 | Whereas clauses(説明条項)あるいはRecitals(リサイタル条項)と言われる部分で、契約書の両当事者がこの契約を締結するに至った背景事情やこの契約の目的が規定されています。文頭に、WHEREAS,という単語を書くといった、伝統的な書式に従っていることも多い。 Whereas clauseは、あくまでも契約の本文ではないので、法的拘束力がない、という有力説があります。しかし、だからと言って全くでたらめなこととか、実態と異なる内容を書くことは絶対に避けるべきです。なぜなら、Whereas clauseが契約本文の解釈に疑義が生じたときの判断基準となることが考えられるからです。 |
本体 | 契約書の本体部分になり、保証約定や権利義務に関する規定が定められる部分です。当然、条文の分量が一番多いです。 |
一般条項 | 契約の種類にかかわらず、契約書一般に共通的に規定される条項で、雑則(Miscellaneous)と言われることもあります。 「雑則」といわれると、なんとなく軽んじてもいいかという印象を与えますが、決してそうではなく、争いの種になることもあるので、契約を締結するにあたっては一般条項の内容も十分に吟味するべきです。 一般条項の具体的中身としては、契約期間、契約解除、譲渡禁止、不可抗力、準拠法、紛争解決など、多くのものがあります。その多くの一般条項のうちどの条項を実際に契約に書くかというのは、契約書の種類とか、重要度等によってその都度判断されます。 |
署名欄 | 国際契約の場合は、捺印ではなく、署名で締結することが大半です。 |
伝統的な表現で記述されており、国内契約と比べると契約書が長い。
英文契約書の中の文章は、ラテン語や古い英語表現など独特の表現が用いられていることが多く、ネイティブの人でもあまり契約書に慣れていない人にとっては、奇妙で読みにくい英文になっているようです。
もちろん口語に近い平易な英語表現で分かりやすい契約書にしたほうが良いのは確かですが、現実にはまだまだ伝統的な表現が残っています。
また欧米人の考え方として「契約書に書いてないことには縛られない」というという契約観があり、そこからくる「縛られるべき内容は極力契約書に明確に書いておく」という考え方にも注目しなくてはなりません。
この点、「世の中には「言わずもがな」の規律がある(すなわち、契約書にいちいち書かなくても当然に守らなくてはならない規律がある。)」という日本人の多数の契約観とのギャップに注意しなくてはなりません。
したがって、国内契約では契約書に書くまでもない内容を国際契約では書いてあるということがしばしばあり、契約書の記述は大きくなりがちです。
国際契約に独特の条項「準拠法条項」がある。
準拠法条項とは、その契約を解釈するときに、どの国の法律を基準にするかを取り決める条項です。国をまたがった当事者間の契約である国際契約に特有の条項です。
だいたいは、自社が存在する国の法律を準拠法にしておきたいので、準拠法条項はもめやすい条項です。どうしても合意できないときには、両当事者の所在する国と異なる第三国の法律を準拠法に指定することもあります。
まとめ
これ以外にも、国内秘密保持契約と国際秘密保持契約との違いはあります。
実際にドラフトを見比べたらよく分かりますが、全く異なるものと考えてもいいでしょう。したがって、国内契約書を機械翻訳したら出来上がる というようなものではないことがお分かりいただけると思います。
よーくわかりました。また具体的に相談させてくださいね。
行政書士すぎやん事務所では、国際秘密保持契約(NDA)の作成のお手伝いをしています。詳しくはホームページをご覧ください。
すぎやんさん。英語できるんですか。やるぅー。