秘密保持契約主要条項11 契約期間と秘密保持期間に関する規定

秘密保持契約の主要条項

秘密保持契約の主要条項解説シリーズ第11回は、契約期間と秘密保持期間に関する規定です。

契約期間と秘密保持期間に関する規定のサンプル

1.本契約の有効期間は、20xx年mm月dd日から 20xx年mm月dd日までとする。ただし、この期間は、甲および乙の書面合意によって変更できる。
2. 前項の規定にかかわらず、本契約が期間満了、解除等により終了した場合においても、本契約に基づく秘密保持義務は、本契約終了後〇年間有効に存続する。

契約期間と秘密保持期間に関する規定の内容

秘密保持契約においては、つぎの二つの期間の概念があります。

契約有効期間:開示目的の実行のために秘密情報を開示したり受領したりする期間
秘密保持期間:開示された秘密情報を契約に基づき管理する義務を負う期間

上記サンプルでは、第1項が契約有効期間を定めており、第2項が秘密保持期間が規定されています。

契約有効期間と秘密保持期間に関する規定のチェックポイント

ここでは契約有効期間と秘密保持期間を分けて検討する必要があります。

契約有効期間の決め方

契約有効期間は、契約の目的や、開示目的の達成に要する期間を勘案して、適切な期間を設定します。具体的には1年間程度を設定することが多いです。注意すべきは不必要に長く設定すべきではないということです。
1年程度の期間を設定しておき、期間延長をする必要が生じたときは、必要に応じて延長覚書を締結するのが良いです。

まれに、契約期間について、自動更新条項(=契約終了の一定期間前までに契約終了の意思表示がない場合、契約有効期間がさらに一定期間延長され、その後もそれを繰り返すとする条項)を入れたいとの要請を受けることがあります。
しかし、「秘密保持契約を結ぶ場面」の項でご説明したように秘密保持契約を締結する意義に照らし合わせると、そのように長期間秘密保持契約を継続するのは一般的にはあり得ません。また、秘密保持期間が繰り返し長期間継続することにもなり、情報管理面での負担も大きくなるというリスクもあります。したがって、秘密保持契約の契約期間では自動更新条項はいれないことをお勧めします。

秘密保持期間の決め方

秘密保持契約が終了したら直ちに秘密保持義務がなくなるとすると、受領者が開示を受けた秘密情報を終了後ただちに第三者に漏らしたり、流用したりするリスクが発生します。
したがって、本契約終了後も一定期間継続して秘密保持義務を負うと定めています。その継続して秘密保持義務を負うべき期間については、開示する秘密情報の重要性を考慮のうえ適切な期間を設定してください。

秘密情報を開示する立場として、秘密保持期間を長くすればするだけ情報の価値がキープできるという考えのもと、秘密保持期間を永久にしている場合があります。
しかし、結果的には情報が公知になれば秘密情報に該当しなくなることから、あまり実効性はないと考えられ、さらに相手方が個人の場合などは、いたずらに重い義務を課す条項として契約の有効性の疑義が乗じる余地もあることから、永久の秘密保持義務ではなく、明確に有期の残存義務とする方が良いです。

秘密保持期間の他の決め方(秘密情報ごとに定める方法)

サンプル条項は「秘密保持契約終了後〇年間」という秘密保持期間の定め方ですが、他の考え方として、開示された秘密情報ごとに、「受領後○年間秘密保持する」という定め方があります
この方法だと、契約期間の延長にともなって秘密保持義務がだらだら続くという点は解消されます。
一方、情報ごとに別々の期間管理をしないといけないことになり、情報管理実務の観点で若干煩雑になるという側面があります。

代替条項例

秘密保持義務は、秘密情報の受領後〇年間継続するものする。

どてらいさん
どてらいさん

期間一つとってもなかなか奥深いですね。

すぎやん
すぎやん

契約書の検討の中で期間については割と簡単に考えがちなんですが、実は奥深いです。慎重に検討して適切な内容を契約書に書く必要がありますね。

すぎやん事務所
すぎやん事務所

行政書士すぎやん事務所では、ヒアリングを通じて把握した契約実行現場の実情にフィットした契約書を作成します。ホームページをご覧ください。