秘密保持契約主要条項12 情報の返却・廃棄・消去に関する規定

秘密保持契約の主要条項

秘密保持契約の主要条項解説シリーズ第12回は情報の返却・廃棄・消去に関する規定です。

情報の返却・廃棄・消去に関する規定のサンプル

1.受領者は、次の各号の一に該当するときは、開示者の選択に従い、直ちに秘密情報(複製物も含む)を開示者に返却し、または受領者の責任において破棄もしくは消去しなければならない。
(1) その使用目的が終了したとき
(2) 相手方から要求があったとき
(3) 本契約が終了したとき
2.甲および乙は、前項における秘密情報の破棄または消去にあたって、当該秘密情報を認識・使用できない状態にしなければならず、相手方から要求があったときは、当該秘密情報を破棄または消去したことを証明する書面を相手方に提出しなければならない。

情報の返却・廃棄・消去に関する規定の内容

秘密保持契約に基づき開示された情報は、次の①~③のような一定の事由により、開示者に返却したり、場合によっては消去したり廃棄したりする場合があります。
①使用目的が終了したとき
②開示者から要求されたとき
③秘密保持契約が終了したとき

上記の①と②は、秘密保持契約における情報開示は任意であるという原則から来ています。①は受領者自身がもう必要ない(だから返却等しますよ)という判断によるもので、②は開示者がもう必要ないだろう(だから返却等してよ)と要求したことによるものです。

②の場合で、受領者としては契約書の目的を遂行するために引き続き秘密情報を参照しないといけないという場合は、開示者に対してその旨を説明して説得するしかありません。その結果、開示者が納得すればいいですが、納得しない場合でも、最終的には開示者の要求通り返却等に応じるしかないと思われます。
③の契約が終了したときというのは容易に理解できると思います。

また、厳格な秘密保持契約ではこれらの場合に該当したときは、その時から「○日以内に返却・廃棄・消去する」という期限が設定されていることもあります。この場合、現実的に対応できる期間を規定するよう交渉することが肝要です。

情報の返却・廃棄・消去に関する規定のチェックポイント

返却・廃棄・消去しなければならない対象は何か

返却・廃棄・消去の対象は、「開示された情報や資料のすべて」なのか、「開示された情報や資料のうち秘密情報の定義に該当するものだけ」なのか、あるいは、「許可を得て作成した複製物をも返却対象に含むのか」という点で、条文表現には注意が必要です。
上記サンプル条文例は、秘密情報に該当するものに限定し、複製物も含むという例であり、一番一般的な規定の仕方です。

返却か廃棄か消去か…そのいずれかを選択するのは誰か

返却か廃棄か消去の選択は、誰の選択によるのかという点については、「開示者の選択により」、とされる場合が多く、上記サンプル条文例でもその考え方で規定されています。
実際には、電子データの秘密情報は、電子データを格納した媒体(CD-ROMなど)を返却するのはあまり意味がなく、受領者のPCなどに格納された電子データを削除するという対応の方が現実的だと思われます。

もっともな条項ではあるがちゃんと守るのは意外と大変

この条項の遵守という観点では、実際の情報管理実務がたいへん重要です。
情報や資料を契約に基づき返却せよと開示者から要求を受けても、社内のどこに情報や資料があるかわからない、複製物も含めて一か所に集めるのが大変ということにもなりがちです。

自己の情報は当然ですが、秘密保持契約に基づき第三者から開示を受けた情報については特にきちんとした管理が求められます。

どてらいさん
どてらいさん

秘密保持契約に基づき受領した秘密情報は、特に大切な他人様の経営資源だという意識を強くもって管理しないといけないですね。それをきちんとやることで信用も生まれる。

すぎやん
すぎやん

そのとおりですね。きちんと情報管理をする会社であるということが、ビジネス界で生きていく上での必要最低条件ですよね。

すぎやん事務所
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