秘密保持契約主要条項13 誠実協議および紛争解決に関する規定

秘密保持契約の主要条項

秘密保持契約の主要条項解説シリーズ第13回は、誠実協議および紛争解決に関する規定です。

誠実協議および紛争解決に関する規定のサンプル

誠実協議に関する条項

本契約に定めのない事項および本契約の各条項の解釈について紛争または疑義が生じたときは、甲乙誠意をもって協議のうえこれを解決するものとする。

紛争解決に関する条項

本契約に関する訴訟については、東京地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。

誠実協議および紛争解決に関する規定の内容

情報漏洩の疑いがある、秘密情報を流用している疑いがあるなど、秘密保持契約をめぐって当事者間にもめごとが発生する場合もあります。そのような場合どう解決するか、契約書では次の二つの方策が用意されています。
誠実協議による解決
裁判等強制的手段による紛争解決

この種の契約条項は、秘密保持契約に特徴的な条項ではなく、広く一般的にどの契約書にも入っている条項で、一般条項と言われたりします。

特に紛争解決に関する条項についてはサンプルでは東京地裁での訴訟による解決としていますが、訴訟による解決とするか、仲裁など訴訟以外の手段による解決等も考えうるので、バリエーションは広いです。紛争解決条項については別のブログ記事で詳細を説明しようと思います。

誠実協議および紛争解決に関する規定のポイント

誠実協議に関する規定のポイント

契約書に関してもめそうなときは当事者の話し合いで解決することが最も良くて、契約書ではいわゆる誠意協議条項が用意されています。
すぎやんの実務経験のなかでも、契約に関する疑義の大半は当事者間の誠意協議で解決しているのが実態です。

ただ、この条項は、日本の契約意識が如実に反映された条項であり、海外との契約にこの誠意協議条項を英訳して入れると、「きょとん」とされることもあります。
海外の人にとっては「協議して解決できるなら契約しなくていいじゃないか」という感覚と思われます。

紛争解決に関する規定のポイント

話し合いで解決できないときは、法的な手段で解決せざるを得ません。
法的な解決手段としては、訴訟、調停、仲裁など様々な方法が用意されています。それぞれの手段の詳細とメリットデメリットはここでは述べませんが、国内当事者同士の秘密保持契約では訴訟で解決すると規定されることが一般的です。

そこで問題になるのが、どこの裁判所で訴訟するかという問題で、基本的には対応に便利である自己の所在地に近い裁判所で行いたいと考えます。この場合、当事者の本拠地が近い場合はあまり問題はないでしょうが、例えば大阪と札幌に離れているような場合は問題になってきます。

そのような場合の一つの解決策として考えられたのがいわゆる被告地主義という考え方です。
これは、訴える当事者(原告)が訴えられる当事者(被告)の本拠地の裁判所に出向いて訴訟をするという考え方です。こうすると、公平ですし、わざわざ遠くに行って訴訟するよりまずは話し合いによる解決を目指そうという思いにつながるという面もあります。
なお、当事者が管轄裁判所を合意している場合、民事訴訟法に基づき決定される管轄裁判所に優先してその合意した裁判所が管轄することになります。

被告地主義とする条文例

本契約に関する訴訟については、被告となる当事者の本店所在地を管轄する地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。

どてらいさん
どてらいさん

相手方と仲良くやっている限り、表に出てくる条項ではないですね。

すぎやん
すぎやん

ま、そうですね。でも、契約書の役割には(現時点では想像できないが)将来的には生じうるリスクに備えた規定をしておくという面もあります。

すぎやん事務所
すぎやん事務所

行政書士すぎやん事務所ではリスクを想定した役に立つ契約書の作成をしています。ホームページをご覧ください。