秘密保持契約の主要条項解説シリーズ第8回は、情報漏洩が判明したときおよび契約違反があったときに関する規定です。
情報漏洩が判明したときおよび契約違反があったときに関する規定のサンプル
情報漏洩が判明したときおよびその疑いがあるときに関する条項
甲および乙は、自己の開示・提供した秘密情報の漏洩が判明した場合またはそのおそれがあると判断した場合、相手方に対し、被害の拡大防止および被害回復のために必要と判断する措置を講じるよう請求することができる。
契約違反があったときに関する条項
1.甲および乙は、相手方が本契約の条項の一に違背したときは、別段の催告を要せず即時本契約を解除することができる。
2.甲および乙は、前項に基づき本契約を解除したか否かを問わず、相手方が本契約に違背したことにより被った損害の賠償を請求することができる。
情報漏洩が判明したときおよび契約違反があったときに関する規定の内容
相手方が情報漏洩したことが判明したとき、またはその疑いがあるときに関する条項です。
相手方が情報漏洩をしたとの疑いをもつきっかけとしては、
相手方に開示した秘密情報が、テレビやネットに出ていたことを感知した。
関係者からの密告があった。
等のケースがあります。
しかし、多くの場合はあくまでも「疑いがある」にとどまるケースが多く、漏洩の証拠を入手するのは難しいことも多い思われます。
したがって秘密保持契約では、情報漏洩の疑いがある段階で、相手方に対して、
実態の調査と報告を請求することができる。
被害の拡大防止及び被害回復措置の実施を請求できる。
という趣旨を規定している場合が多いです。
さらに、秘密情報の漏洩が事実であれば秘密保持契約の違反に該当するので、契約解除および損害賠償請求をすることができることになります。
情報漏洩が判明したときおよび契約違反があったときに関する規定のチェックポイント
情報は貴重な経営資源なので、秘密情報が漏洩してしまったときには、かなり強い経営インパクトが生じます。したがって秘密保持契約では秘密情報が漏洩した場合の対処について以下のようなステップが規定されています。
• 被害拡大防止措置および被害回復のための措置の実施
• 契約解除
• 損害賠償請求
被害拡大防止措置および被害回復措置の具体的内容
情報漏洩が明らかな場合に限らずそのおそれがあるときは、これら被害拡大防止措置および被害回復措置を講ずることを要求できます。
具体的には、以下のように措置を、スピード第一で実施する必要があります。
• 漏洩原因の調査
• 漏洩原因を除去する対策の実施
• ハッカー等犯罪的な手段で情報が流出した場合の警察への通報
• 情報漏洩先の把握とさらなる情報拡散の防止
• 再発防止のための情報管理システムの強化と再整備
契約解除
いったん情報が漏洩した場合、原則として回復は困難なため、催告を要せず秘密保持契約は解除されることが一般的です。「催告を要せず」とは、いついつまでに違反状況が是正されなければ解除する、といった猶予を与えないことをいいます。
損害賠償請求
情報漏洩により損害を被った場合、その賠償を請求します。ただ、ここで難しいのは損害額の算定に関する考え方です。一般的には下記民法416条に定める範囲での賠償ということになりますが、実際にそれを具体的金額に落とすには、ケースバイケースで考える必要があるでしょう。そのような背景もあるので、損害の立証を要せず一定の賠償金を支払うとする予定損害賠償額(Liquidated Damages いわゆるリキダメ)を定める例もあります。しかし、秘密保持契約ではまれであり、場合によっては高リスクな条項になりうるので注意が必要です。
あってはならないことですが、情報漏洩されると取り返しがつかないですね。損害賠償では済まないこともありそうです。
契約上で漏洩リスクに対応しておくことはもちろん、普段から相手方と十分にコミュニケーションをとって、信頼関係を固めておくことが大事ですね。
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