秘密保持契約主要条項6 秘密情報を開示できる範囲に関する規定

秘密保持契約の主要条項

秘密保持契約の主要条項解説シリーズ第6回は、秘密情報を開示できる範囲に関する規定です。

秘密情報を開示できる範囲に関する条項のサンプル

甲および乙は、本目的の推進に携わる自己の役職員以外の者に受領した秘密情報を開示・提供してはならない。

秘密情報を開示できる範囲に関する条項の規定内容

受領した秘密情報を開示できる人的範囲は、当事者の中でも開示目的の推進に必要な役職員に限定されていることが一般的です。情報漏洩リスクを下げるため及び目的外利用を避けるためです。

それほど議論が生じる条項ではないですが、開示目的の推進のためには、
「自己の関係会社の従業員に秘密情報を開示する必要がある場合」や、
「自己の業務委託先やコンサルタント、会計士や弁護士などの外部専門家に秘密情報を開示する必要がある場合」
もあるでしょう。このような場合は、もともとのサンプル条項のままだと契約違反になりますので、条文の追加・修正が必要です。

どてらいさん
どてらいさん

すっと読み流してしまいそうな条文ですが、確かに実務と照らし合わせて読まないと、あとで面倒なことになりそうですね。

チェックポイント1 関係会社や業務委託先への開示が必要な場合は・・・

開示目的の達成のためには自己の関係会社や業務委託先の協力が必要で、受領した秘密情報をそういった協力者に開示が必要になる場合もあります。このような場合に備えて、包括的にまたは非限定的に、「受領した秘密情報を関係会社および業務委託先に再開示できる。」との趣旨が規定される必要があります。
しかしそのままでは情報の拡散が懸念されるので、再開示が必要な関係会社や業務委託先をリストアップして特定したうえで、再開示者が再開示先の秘密保持義務の履行に責任を負うことを規定することが一般的です。 下の追記案と修正案をご参照ください。

修正を検討したい追記案

甲および乙は、本目的の推進に携わる自己の関係会社および業務委託先に対して受領した秘密情報を開示・提供できる。

この追記案の問題としては、
・関係会社や業務委託先が特定されておらず、秘密情報の散逸のリスクが高まる。
・再開示にともなう責任の所在が明確ではない。
という点が挙げられます。

以上の問題点に対応した、改善追記案は次の通りです。

甲および乙は、下記の関係会社および業務委託先(以下、再開示先という)に対して、本目的の推進に必要な範囲に限り、受領した秘密情報を開示・提供できる。ただし、開示した甲またぱ乙は、自己の再開示先に対して本契約で自己が負う秘密保持義務と同様の秘密保持義務を遵守させ、その履行に責任を負うものとする。
甲の再開示先
〇〇〇株式会社
〇〇〇株式会社
〇〇〇株式会社
乙の再開示先
〇〇〇株式会社
〇〇〇株式会社
〇〇〇株式会社

チェックポイント2 専門家にも開示が必要な時もあるでしょう。。。

開示目的の達成のためには、自己の顧問税理士、会計士、弁護士などの専門家に受領した秘密情報を再開示する必要になる場合もあります。そのような専門家は法律上守秘義務を負っていることが多いので、そのような専門家から情報漏洩するリスクは比較的低いといえます。しかし、その専門家は厳密には「自己の従業員」ではないので、専門家にも開示できる旨を明記することが多いです。

甲および乙は、本目的の推進に携わる自己の役職員または自己の顧問先の弁護士、公認会計士もしくは税理士以外の者に受領した秘密情報を開示・提供してはならない。

どてらいさん
どてらいさん

関係会社にしても、お世話になってる顧問税理士の先生も、感覚的には内輪なんですが、法律的には「第三者」なんですね。

すぎやん事務所
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