従業員を信頼していないわけではないのですが、従業員に当社の秘密情報を扱ってもらううえで、秘密保持契約を結んでおいた方が良いと思うのですが。
確かに。けじめとして結ぶ意義はあると思います。ただ、普通に対外的に
使用している秘密保持契約そのままでというのはちょっと違和感があります。
会社と従業員間で結ぶ秘密保持契約
会社の従業員は、日々の仕事の過程で会社の秘密情報を知ることになるのは必然的です。またその秘密情報が従業員から第三者に漏れてしまうと、会社としては困ったことになります。
したがって、会社と従業員の間で秘密保持契約を鄭睦することも一般的に行われています。
基本的に会社と従業員の間では、従業員のみが秘密情報を取得することが想定されるので、入社時及び退職時に、従業員が会社に対して「(秘密保持)誓約書」として差し入れる形式で行うことが多いです。
以下、会社と従業員間の秘密保持契約の特徴について解説します。
結んでおくとも情報セキュリティー意識が高まる効果がある。しかし従業員の賠償能力は限定的であることを念頭に
秘密保持契約では、従業員が会社の秘密情報を漏洩した時には、会社が被った損害を賠償する旨が定められていることが多いです。
こうすることにより従業員の情報セキュリティーの意識が高まるという効果をもたらします。
しかし一方で。従業員は一個人ですので、一般的に賠償資力についてはあまり多くを期待できないことに注意が必要です。
また、従業員が第三者から多額の情報料を受け取って悪意をもって会社の秘密情報を流出したような悪質なケースを除き、従業員の責任は限定的なものになると考えられます。
労働法の規制も視野に入れる必要がある
労働法の中に労働者の保護に関する規定があります。
一例として、会社と従業員間の契約においてリキダメ(Liquidated Damage 損害賠償額の予定)は無効というものがあります。つまり、「従業員が会社の秘密情報を漏洩したときは、損害賠償金として10億円支払う。」というような条項は無効とされるということです。
基本的人権との絡みも注意
従業員の秘密保持義務は、退職後も一定期間継続するというのが一般的です。
しかし、その退職後の秘密保持を強固なものとするために、退職後に従業員自らが在職中の仕事と被る仕事に従事したり、在職中の担当業務と同様の事業を行う会社への就職を禁止する、というようなようなこと(競業避止と言います)は、従業員の基本的人権(職業選択の自由)を制限するものとして、制限期間や制限の範囲、代償の有無等を勘案して合理的と認められる限定的な場合を除いて、原則として禁止されていますので、契約書に書いたとしても無効になる場合があります。
この点、非常に微妙な法律解釈になりますので、どうしても退職者に競業避止を義務付けたい場合は、弁護士など専門家に相談した方が良いでしょう。
よくわかりました。信頼している従業員だからこそ、けじめとして誓約書をとっておこうと思います。
行政書士すぎやん事務所では、従業員との秘密保持誓約書の書式作成のお手伝いをしています。詳しくはホームページをご覧ください。