秘密保持契約の交渉をうまくやるコツを教えてください。
特に特殊な技能はいりませんし、ビジネス交渉に百戦錬磨のどてらいさんなら、楽勝ですよ。
とはいえ、再確認の意味で、交渉するにあたって参考になりそうな心構えとか一般的なポイントをアドバイスさせていただきます。
コツその1 契約書のドラフトを当方から出す。
まずは、契約書のドラフトを当方から出すことについて、相手から合意を得るよう話をしてみましょう。
当方から出すドラフトは、当方自身があらかじめ内容を理解しており、そのまま変更か無ければすぐにでも締結できるように吟味して作られたものですので、これを提示することによって、交渉を優位に進めることができます。
名刺交換から話が盛り上がったときには、
「では、今晩中にこちらから秘密保持契約のたたき台をお送りしますね。」
「はい。お願いします。」
と、とんとん拍子のノリで合意するのが理想です。
なお、ここで、「今晩中に送る」と言うためには、あらかじめ雛形の契約書を用意しておくことが必須です。
雛形の契約書の用意が無いと、ドラフトを作るのに時間がかかるので、「今晩中に」という約束はできませんね。
秘密保持契約は数多く結ぶものですので、あらかじめビジネス背景に合致したひな形を用意しておくことは、大変効果的です。
ただ、もしも先方が自らドラフトを出すことを強く主張している場合は、取引におけるお互いの立場の差などを考慮して、先方から出すことに同意してもやむを得ないと思います(特に、秘密保持契約については・・・)。
そんなことで、喧嘩したり、もめたりすることは全く得策ではありません。
出された先方のドラフトをきちんと検討して必要な交渉をして、適切な契約内容で合意・締結できればいいわけですので・・・
当方からドラフトを出せないときというのは、野球の延長戦の先攻チーム、サッカーのアウエーチームになったようなもんだと割り切りましょう。先攻チームやビジターチームはやや不利とは言われますが、逆に、すんなり勝つこともありますもんね。
コツその2 なるべく早く交渉のボールを返して、抱え込まない
契約交渉の方法としては、当事者が出席した対面会議やテレビ会議の形で行われることもありますが、受け取ったドラフトを修正してメール返信して、必要があればそれをさらに修正してメールで返信して・・・という風に、メールの往復で行うことも多いです。
対面会議やテレビ会議だと、その場で決着することも可能ですが、メールの応酬だと時間がかかりがちです。
このメールでの契約交渉をうまく進めるためのコツは、メールが来たらできるだけ早く内容を検討して返送するということにつきます。
言い換えればボールは持たないということです。
そして、相手方がボールを抱え込んでいるようだと、嫌われない程度にプッシュして、交渉をおし進めることが大事です。
そうすることにより、結果的に交渉の主導権をとることができます。
コツその3 契約の体裁や条文の細部にこだわり過ぎない
ある程度契約交渉に慣れて契約のことが分かってくると、契約書の体裁や条文の細部にこだわりすぎて、合意が遠のくということになりがちです。
例えば、以下のような争点について考えてみましょう。
当方案(雛形)
本契約終了後3年間、秘密保持義務は継続する。
先方修正案
本契約終了後35年間、秘密保持義務は継続する存続するものとする。
この場合、実務上、当方が、5年間秘密情報の管理を継続できるのであれば、5年で合意してもいいです。また、「継続する」であっても「存続するものとする」であっても、(国語的には差があるのかもしれませんが…)意味としては大差ないので、「存続」で合意しても良いのではないかということです。
すぎやんの実際の経験上も、「細部にこだわり過ぎ」と思わせる契約交渉としばしば遭遇しました。
挙句の果てに両社の間に感情的な不信感が生じてしまい、その後のビジネスが頓挫してしまったというケースもありました。
まさしく「木を見て森を見ず」にならないように注意しましょう。
コツその4 相手に花を持たせることを考える。
契約交渉は、「合意した契約書」という成果物を作り上げるための、契約当事者間の共同作業であるということをしっかりと認識していただきたいです。
中には、交渉ということで、自分の主張を強引に押し進めて、相手方を屈服させることに情熱を傾ける人がいます。
そんな経緯で出来上がった契約書はアンバランスな契約書になるし、何よりも、強引な交渉の過程で両当事者間に生じた感情のしこりが原因で、のちのビジネスがうまく行かなくなるということにもなりがちです。
契約交渉は、実際のところ、感情を持つ生身の人間が行うものです。お互いを尊重しつつしっかりと議論して、時には相手に花を持たせるということが、契約交渉のコツということになります。
コツその5 礼儀正しく。
契約交渉の議論が白熱すると、感情的になって、礼節に外れた言葉遣いになってしまうことがあります。特に、両当事者間に規模の差とか取引上の立場の差があるときには、強者が弱者に対して失礼な言葉使いをしてしまうこともあります。
しかし、これはビジネスの常識として絶対にタブーです。会社の場合は社風を、個人の場合は人間性を疑われ、ビジネス展開の支障になります。また、レピュテーションリスクの問題さえ生じかねません。
契約交渉に熱意を込めることはもちろん大事ですが、礼節はわきまえることは、ビジネスの世界で生きていくうえで、基本動作として絶対に忘れてはなりません。
まとめ
以上のように秘密保持契約の交渉のコツというのは、ビジネスの基本動作と言えるようなものであり、これらをしっかり意識して迅速に契約締結できるよう進めるのがペストです。
よくわかったよ。礼儀が大事ということですね。
行政書士すぎやん事務所では、契約交渉に関するご相談にも対応しています。