取引上の立場の差があっても対等に契約交渉をするには

契約交渉術
どてらいさん
どてらいさん

相手との取引上の立場の差が動かしがたいので、契約書もいわれるがままになってばかりです。

すぎやん
すぎやん

取引上の立場の優劣は確かにありますが、ちょっとした工夫により対等に契約交渉ができることもあります。

取引上の立場の優劣は確かにありますが・・・

実際、取引の当事者間において立場が対等という場合は少なく、おおよそほとんどの取引の当事者間には立場上の優劣があります。
物の売買では買主が優位、請負では発注者が優位、雇用の場合は雇い主が優位、貸借では貸主が優位というのが通常です(もちろん例外もたくさんあります。例えば需要に対して供給がひっ迫している商品の売買では売主優位の場合があるでしょう。)。
さらに、会社の規模や市場での地位によっても立場の優劣が生じることもあるでしょう。これは客観的に考えても仕方ない部分もあります。

立場の優劣があっても対等に契約交渉するために

たしかに、取引上の優劣関係が、そのまま契約交渉に持ち込まれることが多いのも事実です。
優位の当事者が用意した契約ドラフトをほとんど交渉せず締結することを迫ったり、劣位の当事者が契約ドラフトに対するコメントを出しても、優位の当事者が全く聞き入れないとことも多いです。
その結果、優位の当事者に極端に有利な契約書ができてしまうことになります。

すぎやんは、そのような状態は、劣位の立場の当事者にとってはもちろんのこと、優位の立場の当事者にとっても理想の形ではないと考えます。
立場の優位性を背景に、いくら圧倒的に有利な契約書になったところで、相手方がそれを守れないということになると、結局その契約書は良い契約書ではありません。
適正なバランス感覚があるお互いに守ることができる契約書であることが大事です。

交渉上のいくつかの工夫を駆使することにより、お互いが対等に近い立場で契約交渉ができることがあります。そのいくつかの「工夫」について次に述べていきます。

BATNAを確保して契約交渉に臨む

BATNA(Best Alternative To Negotiated Agreement)を確保して契約交渉に臨むことが、対等な契約交渉につながることがあります。
BATNAがなく、契約交渉決裂はあり得ないという立場で契約交渉に臨むと、契約交渉での反撃力はなく、相手方に服従する契約書になってしまいがちです。
一方、BATNAを検討し、最悪、交渉撤退も辞さないというスタンスで交渉に臨むと状況も変わってきます。

契約ドラフトを提示する立場を獲得する

契約ドラフトを提示した当事者に比較的有利な契約書で決着することが多いです。
そこで、「当方から契約書のたたき台を出します」と、交渉の初期段階で積極的に申し出て相手方に認めさせたら、対等な契約交渉につながる可能性が出てきます。

ここの交渉には、独特なテクニックが必要です。
すぎやんの企業法務実務時代に、ほんとうにうまくこれをやるビジネスマンがいました。たたき台を出しますと提案するタイミングと言い回しが絶妙です。
最初の交渉の時に「契約のたたき台は、当社には過去の参考契約もあるし、法務に依頼して明後日中に準備させますから、当社から出しますね。それを見ていただきコメントを下さいね」といい、板書している交渉スケジュール表に書き込んじゃう。というようなやりかたでした。

大企業の方が、社内調整のステップが多く、契約ドラフトを完成するのにも時間がかかるというようなこともあります。この積極ドラフト速攻作戦は、小規模企業ならではの機動力の良さを発揮できる絶好のチャンスでもあり、契約交渉戦略として有効になりえます。

論点を整理して優先順位をつけて交渉する

契約交渉における双方当事者の意見が違う個所について早急にまとめて、当方の案を通したい順に順位をつけるて交渉に臨むべきです。

契約交渉において全部の争点を当方主張通りに勝ち取りに行くのは難しい場合がほとんどです。「こちらの争点は譲るがこちらの争点は当方提案を認めてほしい。」という形で交渉していくのが、いい結果につながることがあります。

法律が守ってくれている場合もある

独禁法、下請法その他の強行規定で、弱者が保護されています。極端に不利な契約条件は法的に無効である場合があります。
契約ドラフトに強行規定違反の疑いがある条項が見つかったときは、専門家(弁護士)に相談するなどしてもいいかもしれません。

どてらいさん
どてらいさん

いうことを聞くしかないと最初からあきらめずに、知恵を絞って対等に契約交渉していきたいです。