秘密保持契約主要条項2 秘密情報を開示する目的に関する条項

秘密保持契約の主要条項

秘密保持契約の主要条項解説シリーズ第2回は、秘密情報を開示する目的に関する条項です。

秘密情報を開示する目的に関する条項のサンプル

ABC株式会社(以下「甲」という。)と 株式会社XYZ商事(以下「乙」という。)とは、 〇〇〇〇について検討するにあたり(以下「本取引」という。)、甲又は乙が相手方に開示する秘密情報の取扱いについて、以下のとおりの秘密保持契約を締結する。

上記条文例で〇〇〇の部分に記載されるのが秘密情報の開示目的です。〇〇〇の記載内容はいろいろなパターンがありえます。例えば…、

  • 甲が開発中の□□商品を乙が購入する可能性を検討すること
  • 甲の□□システムを乙の□□サービスに採用する可能性を検討すること
  • 甲乙間での継続的売買取引の可能性を検討すること
  • 甲の□□技術と乙の□□技術を活用した共同開発の可能性を検討すること

などです。

秘密情報を開示する目的に関する条項の内容

秘密情報を開示する目的に関する条項は、次の二つの点で効果を表します。

  • 開示目的以外の用途に秘密情報を利用してはならない。
  • 開示目的に関係ある人にしか秘密情報を開示してはならない。

いずれも、秘密情報を保護するために不可欠の重要な効果です。少し掘り下げてご説明します。

開示目的以外の用途に秘密情報を利用してはならない。

例えば上記例示の最初の開示目的(甲が開発中の□□商品を乙が購入する可能性を検討すること)の場合、甲は乙に対して□□商品の予定価格とか仕様といった秘密情報を開示するでしょう。
そういった秘密情報を受け取った乙が自分の類似商品の開発のために利用して、より安い価格の商品を開発したら、あるいは仕様を盗用した商品を開発したら、甲としては全く不本意でしょう。そういった乙による秘密情報の利用は開示目的外の利用であり、重大な契約違反となります。

開示目的に関係ある人にしか秘密情報を開示してはならない。

特に大規模な会社の場合、秘密情報が開示目的と関係のない部門の人間に開示されると問題が生じかねません。
例えば上記例示の最初の開示目的(甲が開発中の□□商品を乙が購入する可能性を検討すること)の場合、甲が開示した□□価格を乙の購買部門が利用するというのは通常ですが、仮に乙が□□商品と競合する商品の企画開発を計画している場合で、乙の商品企画部門や営業部門に甲の秘密情報が流れると、甲としては不安でしょう。そのような開示目的と関係のない部門への情報開示は、契約違反になります。

秘密情報を開示する目的に関する条項のチェックポイント

秘密情報を開示する目的に関する条項をチェックする時に最も注意したいのか、なるべく具体的に記載するということです。

実務経験の中で、このような規定例にたまに出くわします。

  • 甲乙間の取引可能性を検討すること(以下、本目的という)
  • 甲と乙でのビジネス協力の可能性を検討すること(以下、本目的という) 

これらは開示目的が幅広すぎる例です。
現場の意見としては、幅広い開示目的にしておいたら、商談の中で取引の幅が広がった場合に、いちいち秘密保持契約を締結する煩わしさが避けられるという思惑があるようです。
しかし、これでは開示目的を規定する目的が薄まってしまいます。すぎやんの実務ではこのような例に遭遇したときは、開示目的を規定する意味を説明して、もっと具体的に記載するよう説得しました。多くの現場部門の人は納得してくれました。

どてらいさん
どてらいさん

バランスが大事ということですね。

すぎやん事務所
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契約書の作成経験が多い行政書士すぎやん事務所に、契約書の作成を依頼してはいかがでしょうか? 開示目的の条項についてもお客様にヒアリングして、オリジナルで適切な内容を作成することができます。詳しくはホームページをご覧ください。