せっかくなら、当方に有利なカンペキな契約で締結したいです。
気持ちはわかりますが、よっぽど状況が恵まれていない限り無理ですよ。
カンペキな内容の契約で締結したい!
当方に有利な内容で、全くリスクがない(つまり、先方に全てのリスク負担をさせる)契約をカンペキな契約と呼ぶのであれば、そんな契約を締結できることはほとんどないと考えるべきでしょう。
当方が先方に対して圧倒的に優越した立場にあって、いわゆる「いいなり」の関係であるときには、そんなカンペキな契約を締結できるかもしれないのですが、そのような状況はまれです。
逆に、そのような優越的な立場を利用して先方に対して極端に不利な条件を押し付けた契約をすることで、法的に禁止されている優越的地位の濫用行為や信義則違反に該当する可能性さえあるので、注意が必要です。
契約交渉を行う場合は、やはり一部は先方の主張を反映する部分も。
一番オーソドックスなケースと言って良い、締結する契約書の内容について交渉を行う場合には、必ずどこかの部分で先方の意見を反映した契約になって締結することになるはずです。
いくら契約知識や交渉術を駆使して交渉しても最終的には「100対0」にはならず、「80対20」、「60対40」などといったスコアになるはずです。
しかし、「100対0」にならなかった結果は決して交渉失敗ではありません。
良い契約交渉とは。
良い契約交渉とは何かについて、交渉のタイプ別にみていきましょう。
すぎやんオリジナルの4つの類型です。
- 負け犬型契約交渉
- 独裁王型契約交渉
- 場当たり型契約交渉
- 俯瞰バランス型契約交渉
負け犬型契約交渉
このタイプは、当事者の取引上の立場の優劣の差が歴然としているという判断のもと、どうせ契約交渉しても当方の意見は必ず否定されるであろうという諦め感のもと、先方の意見を全面的に受け入れる形の契約交渉です。
これはそもそも契約交渉自体を放棄しているので、もっとも良くない交渉スタイルだと思います。
独裁王型契約交渉
このタイプは、当方の取引上の優越的な立場を利用して、先方に対して不利な条件を強引に押し付ける形の契約交渉です。なにか先方から契約に対して意見が出たとしても、立場を利用して撥ねつけるので、結局契約交渉にはなっていません。
また、先ほど述べた優越的地位の濫用の問題が生じる可能性もあります。
この交渉タイプだと、一次的には非常に有利な契約を締結できることが多いです。しかし、その契約に基づく実際のビジネスについていえば、良好に継続して続くとか、ビジネスの幅が拡大していくとかいうことは少ない傾向があります。
それは、当事者の力の差がいつまで続くか流動的であるとか、契約交渉過程において先方が味わった屈辱感が将来のビジネス拡大に向かわせる気力を失わせる感情的な面も理由です。
場当たり型契約交渉
このタイプは、契約書の各論点の交渉は熱心に行うものの、交渉スタイルとしては場当たり的であり、最終的には、あまり重要ではない論点だけについて当方の意見が反映された契約書になるバターンです。
当方の意見が一部反映されているという点で先に述べた「負け犬型」よりはマシであるものの、当方のビジネスにとってはあまり好ましくない交渉スタイルだと考えます。
俯瞰バランス型契約交渉
このタイプは契約書全体を俯瞰してどの論点については先方に譲ってどの論点では当方主張を強調するといった戦略的なプランのもと交渉していくパターンです。
言わずもがな、最高の契約交渉スタイルです。
理想の契約交渉スタイルをとるために
理想とする「俯瞰バランス型」契約交渉スタイルをとるために最も大事なのが計画的に契約交渉することです。
このタイプで契約交渉行うには、まが契約書全体を確認して、主要な論点について対応の考え方を纏めることが必要です。「この論点は譲っていい。」「この論点については強く交渉してここの妥協点までは勝ち取ろう。」といった緻密な計画を立てます。
相手方の出方も想定しつつ、シミュレーションしていきます。「タームシート」という論点整理のシートを準備すると検討しやすいと思います。
ポイントはここは譲ってもいいという論点をいくつか用意しておくことです。契約交渉は双方向の意見をぶつけあって最適の解を見出していくということですから、譲れる論点というのは必ず必要なのです。
全戦全勝の完全勝利はまず現実的ではないし、うまくバランス感覚をもって交渉することが大事ということですね。