法律が守ってくれることもあるが、やはり安易な署名捺印はリスキー

契約交渉術
どてらいさん
どてらいさん

取引先が契約書を振りかざして、理不尽なことを要求してきました。

確かに契約書を読むと取引先が言う通りのことが書いてあるようだし、僕のハンコを押しているし・・・。

こちらが創業当初で、先方は大企業で、強く急かされてハンコを押した覚えはあるんですが・・・。諦めないとと仕方ないですか?

すぎやん
すぎやん

それはお困りですね。

捺印された契約書が絶対的な意味を持つのは確かですけど、場合によっては法律の力で救済されることもあります。

捺印した契約書は絶対という原則

両方の当事者が捺印又はサインした契約書は絶対というのが基本的なルールです。
ありがちな以下のようなコメントは基本的に通用しません。まずはその点を認識してください。

  • 契約書を読む時間を与えられず、中身を読まずにハンコを押した。
  • 専門用語ばかり書いていて意味がよくわからなかったが、相手も一流企業だし無茶なことは書いていないだろうと信じてハンコを押した。
  • ハンコを押す前に契約書の内容についてざっと口頭で説明を受けた記憶があるが、実際に捺印した契約書に書かれている内容と違うような気がする。
  • 相手から提示された日本語で書かれた簡単な契約概要だけを読んで、英語で書かれた契約書にサインしてしまった。契約概要に書かれていない部分で不利な内容がその英文契約書には書いてあるみたいだ。
  • パソコンの画面に契約条項が映しだされ、ざっと読んだものの急いでいたので十分理解しないまま承諾ボタンをクリックしてサービスを利用した。契約条項の記録も取ってないしどんな契約だったか今となってはわからない。

両方の当事者が捺印またはサインをした契約書というのは非常に重い意味があって、法的紛争の最終的な行きつく先である裁判所は、契約書に捺印またはサインした当事者が、契約書に書かれている内容を理解していて、納得していて、これに縛られることを容認したととらえて判断します。

契約書の内容が客観的に一方当事者にとって有利とか不利とかは判断しません。
「あなたは不利なことを承知の上でハンコを押したんでしょ。」という考え方です。

したがって、上記に列挙した言い訳はおおよそ通用しません。その点はまず前提として認識しておくべきです。

捺印した契約書は絶対という原則の例外

両方の当事者が捺印またはサインした契約書は絶対という原則がありますが、以下に掲げるごくわずかな例外があります。

事業者と消費者の間の契約

事業者と消費者の間には、 交渉力の差、契約に関する知識の差が歴然としてありますので、消費者保護の観点から法律の規定により、事業者の不当な勧誘によって契約をしたときは、消費者はその契約の取消しが可能であったり、消費者の権利を不当に害する契約条項は無効となる場合があります。(消費者契約法)

詐欺または脅迫により捺印させた契約

詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる(民法96条1項)。
したがって詐欺または脅迫によって契約書に捺印した場合、その契約書を取り消すことができます。

ただし、詐欺または脅迫の立証責任は取消しを求める側にありますし、第三者への取り消しを主張できない場合もあります。
したがって、短絡的にこの民法の規定に従って後で取消しできるので、相手方のひつこい担当者に絡まれてうるさいのでとりあえずハンコ押しとこうと考えるのは危険です。
監禁や脅迫されてハンコを押さないと生命の危険があるような極端なケースしか認められないと思っておいた方が良いでしょう。

公序良俗に違反した契約

契約書の内容が人身売買契約、殺人委託契約など、公序良俗に反する契約は無効とされる場合があります。(民法90条)

独禁法等に違反した契約

独禁法や下請法などの法律により、一定の取引形態の場合に一定の取引条件や一定の要件を満たさない契約が無効とされる場合があります。親事業者など強い立場の者による横暴から下請事業者など弱者を保護するための法律で規定されているものです。 (下請代金支払遅延等防止法)

強行法違反の契約

闇金融規制に関する法規や労働関係法規など強行法に違反した契約は取消しができたり、無効となる場合があります。

白黒つけるには、裁判沙汰・・・。安易に捺印したりサインしないことが何よりです。

上記に挙げた、捺印またはサインした契約書を取消しできたりや無効になったりするいずれの場合も、当事者間の話し合いで解決せず、確定的に取消しをしたり無効になるには、訴訟などの手段によって裁判所によって判断される必要があります。

そうなると最終的な解決には時間を要しますし、弁護士費用等対応コストも掛かります。また、その前提として当然ながら法律の解釈には非常に微妙な部分もあるので弁護士等専門家の助力が必須です。

したがって何よりも大切なのは、安易に契約書に捺印しないこと。サインをしないこと。承認クリックをしないこと。です。

どてらいさん
どてらいさん

やはり、安易にハンコを押さないという自衛策がベストですね。