契約書に書く文章の文調についてなにか注意点はありますか?
ですます調やである調など文調によっていろいろ印象の違いがありますが、どういった文調で契約書を作るかは好みの問題ですね。
むしろ大切なのは、統一感です。
契約書の文調は実に様々
契約書の文章の文調は実に様々です。
例えば同じことを言っているんですが、次のようにバリエーションはあります。
- 甲は、乙に対して遅延損害金を支払う。
- 甲は、乙に対して遅延損害金を支払います。
- 甲は、乙に対して遅延損害金を支払うものとする。
- 甲は、乙に対して遅延損害金を支払わなければならない。
- 乙は、甲に対して遅延損害金の支払いを請求できる。
他にも表現の仕方があるかもしれません。日本語の表現の豊かさによるものでしょう。
趣味の問題といえばそれまでですが・・・
上記の通り、同じことを言いたい場合にも様々な文調が考えられ、それぞれ微妙な違いというか、感覚的な印象が異なります。
例えば、企業が一般消費者向けに提案するB to Cの契約・規約等は、「ですます調」で書かれていることが多いようです。契約書全体をソフトで親しみやすい印象にすることを狙ったものだと思われます。また、書かれている内容はえぐいこともあったりして、それを文調の印象で覆い隠す要素もあるのかもしれません。
契約書は中身が勝負ですので、どの文調を採用するかは、趣味の問題といえます。
ただ、上記のうちで一番下の例(乙は、甲に対して遅延損害金の支払いを請求できる。)は、実は実務では頻出なんですが、読み方によっては、「乙が請求するのは勝手だが、甲が払うか払わないかは別問題。」みたいな議論が出てくるので、契約文言としてはできるだけ避けたほうがいいでしょう。
大切なのは、統一感とシンプル感
契約書で使用する文章の文調をチェックするうえで一番重要なのが、契約書全体で統一感を持たせるということです。
ですます調と、である調が混在していると、契約書として読みにくいし、気持ち悪さが残ります。
また、契約書はできるだけシンプルに、わかりやすくした方が良いのは確かですので、「ものとする調」は避けれるものなら避けたほうが良いでしょう。
とはいえ、契約実務として、契約書のドラフトの提案を受けた場合は、ドラフト提案者の立場を尊重して、文調の大転換を要求するカウンター提案は避けた方が良いし、少々の文調不統一も見過ごしても良いと考えます。
文調で争うのなんて、ナンセンスということですね。
自分が提示した契約書のドラフトに対して、文調の訂正を数多く指摘するカウンターを受け取ってむかつく、というのは企業法務担当のあるあるですね。