契約書って必ず印紙を貼らないといけないのですか?
印紙のいるいらない契約書の内容によって決まります。
印紙税法は意外となかなか奥深いのですが、ざっくり概要をご説明します。
印紙税とは
印紙税は、日常の経済取引に伴って作成する契約書や金銭の受取書(領収書)など特定の文書に課税される税金です。
では、契約書であれば必ず印紙を貼らないといけないかといえばそうではなく、印紙税法の別表第1(課税物件表)に掲げられている文書にのみ課税されます。従って、契約書の体裁の文書であっても課税物件表に定められた文書でなければ印紙税は不課税です。
印紙税法別表第1(課税物件表)は、国税庁ホームページからダウンロードできますので、最新のものをご確認ください。
印紙税の特色
印紙税は文書課税です。
印紙税法は特定の経済取引や法律行為を証明する目的で作成される「文書」を課税対象にしています。従って、経済取引をしても文書が作成されていなければ課税されることはありません。
電子契約は文書でないので、印紙税は課税されません。したがって。この点が電子契約のメリットとして強調されることも多いです。ただし、電子契約であっても紙に出力して原本として利用する場合は、印紙税の課税対象となる可能性があります。
非課税文書があります。
課税物件表の非課税物件欄に掲げる文書(金額が低いなど零細なもの)や、国・地方公共団体などが作成する公共性を持った文書は非課税文書として印紙税は課税されません。
納税方法は自主納付方式
印紙税の納付は、作成した文書に納付すべき税額に相当する印紙を貼付し、それを消印する方法で行います。印紙を貼っていても消印をしないと印紙税を納付したことにはなりません。
消印の方法
印紙税の課税対象となる文書に印紙を貼り付けた場合、その文書と印紙の彩紋とにかけて判明に印紙を消さなければなりません。
消印をする人は文書の作成者に限られていません。代理人、使用人、従業者の印章または署名でも消印できます。
消印には印章だけでなく、氏名や名称を表示した日付印、ゴム印、署名も使用できます。
ただし、ペンなどで「印」と書いたり斜線を引いたりしただけでは消印にはなりません。
複数の人が共同して作成した文書の場合(例えば、複数当事者で締結する契約書)は、作成者のうち誰か1人が消印すればよいことになっています。慣習的に契約書に調印するときに全当事者が消印することが多いですが、マストではないということです。
印紙税の課税範囲の基本的事項
印紙税課税文書に該当するかどうかの判断は文書の内容で判断する
作成された文書が課税対象に該当するかどうかは、その文書の名称又は呼称および形式的な記載文言によることなく、その記載文言の実質的な意義に基づいて判断されます。
例えば、表題が「委任契約」であっても契約内容が民法上の概念照らして「請負契約」に該当するものであれば、課税文書になります。
他の文書を引用している文書の判断について
原則として、原契約書、約款、見積書その他当該文書以外の文書を引用する旨の文言の記載がある場合は、当該文書に記載されているものとしてその文書の記載内容を判断することなります。
印紙税法における契約書とは
印紙税法でいう契約書とは、契約証書、協定書、約定書その他名称のいかんを問わず、契約(その予約を含みます。以下同じ。)の成立もしくは更改または契約の内容の変更もしくは補充の事実(以下「契約の成立等」といいます。)を証すべき文書をいい、念書、請書その他契約の当事者の一方のみが作成する文書または契約の当事者の全部もしくは一部の署名を欠く文書で、当事者間の了解または商慣習に基づき契約の成立等を証することになっているものも含まれます。
したがって、通常、契約の申込みの事実を証明する目的で作成される申込書、注文書、依頼書などと表示された文書であっても、実質的にみて、その文書によって契約の成立等が証明されるものは、契約書に該当することになります。
印紙税は、契約の成立を証明する目的で作成された文書を課税対象とするものですので、契約書のコピーや写しには課税されません。ファックスや電子メールで送付して送付先で機械的に出力したものも写しと同様ですので、印紙税は課税されません。
しかし、写し、副本、謄本などと表示された文書であっても、おおむね次のような形態のものは、契約の成立を証明する目的で作成されたことが文書上明らかですから、印紙税の課税対象になります。
(1)契約当事者の双方または文書の所持者以外の一方の署名または押印があるもの
(2)正本などと相違ないこと、または写し、副本、謄本等であることなどの契約当事者の証明のあるもの(なお、所持する文書に自分だけの印鑑を押したものは課税対象とはなりません。)
日本の印紙税が課税されるのは日本国内で作成した文書
日本の印紙税が課税されるのは、日本国内で作成された文書に限ります。
その点、国際契約の場合に使える一つの節税方法があります。
例えば、日本の当事者が3月1日に日本において契約書にサインして、それを海外当事者に郵送し、海外当事者が3月15日に海外においてサインした場合、時系列的に当該契約書は海外で作成した文書になりますので、日本の印紙税は適用されません。
なお、そのように海外で作成した文書であることを証明するために、契約書のサイン欄にサイン日付とサイン場所を記載することがあります。ただし、海外の一部の国では日本の印紙税に類似した文書に課税する税制度がある国もありますので注意が必要です。
印紙税法のその他論点について
印紙税の課税判断において、一の文書で課税物件表の2以上の号に掲げる文書に該当する場合の判断、文書の記載金額の判断、第7号文書(継続的取引の基本となる契約書)の判定など、多くの微妙な論点があります。
法務実務の観点から言うと、実際に一つ一つの文書を確認しないと印紙税の課非判定ができない場合も多いです。
国税庁のホームページなど参照しても判断できないときは、専門家に相談することをお勧めします。
単発で締結する契約書ならばまだ影響は少ないですが、会社の所定書式として大量に使用する文書の場合は、事前にきちんと判断しておくことが大事です。
印紙税がいるいらんはややこしそうですね。個別具体的に相談させてくださいね。
もちろん。数年前ですが、某コンビニチェーンが1億3千万円の印紙税申告漏れを指摘されたとのニュースもありました。印紙税はどちらかというし地味な税金ですが、キチンと納税義務を果たすことは大事ですよね。