契約書のハンコについて 消印、捨印、契印、割印、訂正印など

ハンコの知識
どてらいさん
どてらいさん

交渉が終わって契約書を締結するときに、いっぱいハンコを押しますよね。

すぎやん
すぎやん

はい。ちょつとお作法的なやり方があります。消印、捨印、契印、割印、訂正印などといろいろありますが、ちょっと見ていきましょう。

まずは図で全体イメージを

まずは、下の図で契約書に押すハンコの全体イメージをつかんでください。

7種類のハンコについて、解説していきます。

1. 消印

印紙(や切手)の再利用をふせぐために押すハンコです。

印紙を消す方法は、文書の作成者又は代理人、使用人その他の従業者の印章又は署名によることになっています。
よって、消印は契約書の捺印欄に押した印でなくても、作成者、代理人、使用人、従業者の印章又は署名であれば、どのようなものでも差し支えありません。

印紙は判明に消さなければならないこととされていますから、一見して誰が消印したかが明らかとなる程度に印章を押し又は署名することが必要であり、かつ、通常の方法では消印を取り去ることができないことが必要です。
したがって、鉛筆で署名したもののように簡単に消し去ることができるものでは、消印をしたことにはなりません。

ちなみに、消印は、契約の当事者全員が押してもいいし、一人だけ押しても良いです。

2. 捨印

捨印は、あらかじめ書類の欄外に押印しておき、後日訂正箇所が見つかった場合にその欄外の印を使用して訂正をするようにしておくことです。

例えば、官公庁に提出する書類について、官公庁に書類を持参し確認を受けた結果、書類の一部訂正を指示された場合において、捨印があれば一旦書類を持ち帰って訂正して関係者の訂正印を集めるという手間を省けるといった利点があります。

しかし、当事者の察知しないところで書面が変更されてしまうというリスクもあるので、捨印を押す際には、その文書の内容とか捨印を使用する場面および関連する当事者の信頼度を想定して、必要性について十分注意して判断する必要があります。

捨印を活用するとしても、軽易な変更のときに限って利用するのが本来の姿だと考えます。

基本的に捨印は押さないという方針で考えている人もいます。

3. 契印

契印は、文書が2枚以上にわたる場合、それが一体で順番に綴られていることを明確にするため、ページの継ぎ目に押す印章のことを言います。
ページの抜き取り、差し替えを防止する目的のものです。

文書が2-3枚であれば、契印する個所も少ないですが、ページ数が多くなる場合は、製本テープなどで製本し、表紙と製本テープをまたがって契印を押すという実務も行われています。

複数当事者で作成する契約書の場合、契約書の記名押印欄で用いた印章で文書成者全員が行うのが通例です。

4. 割印

割印は、複数の文書にまたがるように押印することで文書が同一であることまたは製本と副本などのように関連した文書であることを示したり証明したりします。

契約書を2通作成して各当事者で保管するような場合には、同一内容であることを証明するために割印を押すこともありますが、企業法務実務ではそんなにしばしば割印実務は行われていないのが実態です。

割印も、文書の作成者全員が行うのが原則ですが、記名押印で使用した印章と異なってもいいとされています。

5. 止め印

止め印は、文書に余白が生じたときに、文書の記載が終わる場所にそこが文書の終わりであることを示す意味で押す印です。
無断追記などの文書偽造を防ぐためのものです。

実務では、止め印の代わりに「以下余白」と印字することの方が多いかもしれません。

6. 記名押印/署名捺印

書類の内容を認め、責任を持つということ。契約書に書いてある効果を発生させる。また、契約者本人であることの証明のハンコです。

記名押印のやり方について特段の規定はないが、商慣習上、名前に一部かぶせてハンコを押す場合が多いです。(ハンコを押すことで記名が読みづらくならないよう注意しましょう)

署名とは、いわゆるサインの事で、自分の氏名を記載する事であり、そこにハンコを押すことで署名捺印といいます。署名捺印が一番証拠力があるといわれています。

記名押印とは、既に印刷やゴム印を押されている書類にハンコを押すことであり、国内契約書では一番一般的なやり方です。

7. 訂正印

訂正印は文書の一部を訂正するときに押す印です。

訂正箇所の文字を二重線で消し、その訂正したページの上段の余白や訂正箇所に近接した場所に訂正印を押し、「〇字削除〇字加入」と書き入れます。なおこの〇字には壱、弐、参・・・などの大字(だいじ)で記載することもあります。

訂正した文字は、黒く塗りつぶすのではなく、見えるように二重線で消します。訂正印で使用するハンコは、記名押印で使用したハンコで、記名押印した全員が訂正印を押すのが原則です。

契約書の訂正の場合はいわゆる「まめ印」と呼ばれる小型の訂正専用のハンコは使いません。

なお、契約書の訂正を修正テープや修正液で行うのは原則としてタブーとされています。

契約書の両面印刷について(契印関連まめ知識)

契約書を両面印刷で作成してもいいかという質問を時々受けることがあります。
両面印刷だと紙の節約になるというメリットもあります。

この質問に対する答えは、
「問題ないです。しかし中には片面印刷にこだわりのある人や会社がありますので、相手方と相談して決めてください。」ということになります。

今の複写機では両面印刷で裏側の文字が透けて見づらいというようなことはほとんどありませんが、保有するプリンタが片面印刷の機能しかない場合や、大量の契約書を閉じる際の利便等いろいろな事務上の都合で片面印刷または両面印刷を指定される場合もあります。

両面か片面かでもめるのは馬鹿らしいので、ここは平和裏に話し合って決めてください。

どてらいさん
どてらいさん

細かいところは、知っていそうで知らないことがたくさんありました。

ありがとう。

すぎやん
すぎやん

一部の書籍や著述の中には、「捨印は絶対に押すべきではない」と主張されるものもありますが、信頼できる企業との契約書の場合や、公的機関に提出する書類などであれば、捨印を押しても大丈夫と思わわれます。リスクを理解してケースバイケースで判断しましょう。