判断主導権を取られすぎててあぶない

あぶない契約書
どてらいさん
どてらいさん

取引における主導権をとりたいのは確かだけど、もともと存在する力の差もあってなかなか難しいです。

すぎやん
すぎやん

まあそれは仕方ない部分はあるものの、契約書の工夫で相手方の独断暴走をけん制したり、緩和できることもあります。

判断主導権が握られている条項例

判断主導権が握られているサンプルを3つほど挙げてみます。

サンプル1 検査合否判断

甲は、乙が納品した製品を検査し、甲が別途定める基準を満たすと判断したときには乙に通知する。

サンプル2 対応方法選択判断

本契約終了時、甲は、乙から開示された秘密情報を、甲が選択するところにより、廃棄、消去し、または乙に返却する。

サンプル3 共同開発完了判断

試作品が開発目標レベルに到達したと甲が認め、乙に通知したときに、本共同開発は終了する。

いずれの事例も甲に判断権がゆだねられています。
乙としてはまな板の上の鯉状態です。

状況的には乙にとって非常に不安定といえるでしょう。

暴走をけん制するために

このように判断主導権が奪われた契約ドラフトを提示されたときには、以下のような対応の考え方があります。

判断主導権を奪い返す

判断主導権を相手方から当方に奪い取る提案です。当然相手方の抵抗は強いことが予想されますが、その提案の合理性を説明できる材料があるなら堂々と主張していいと考えます。また、潜在的な落としどころを視野に入れつつ、あえて投じるハイボールとして提案してもいいかと思います。(乱闘にならない程度にね…汗)

サンプル1 検査合否判断

乙は、乙が別途定める検査基準を満たすと判断した製品のみを甲に納品するものとし、甲は品質上の異議は申し立てないものとする。

サンプル2 対応方法選択判断

本契約終了時、甲は、乙から開示された秘密情報を、乙が選択するところにより、廃棄、消去し、または乙に返却する。

サンプル3 共同開発完了判断

試作品が開発目標レベルに到達したと乙が認め、甲に通知したときに、本共同開発は終了する。

判断に食い込む

判断を相手方の独断にせず、判断プロセスに当方も食い込むという提案です。この場合、協議して判断するということになるので、結局協議でもめる可能性は出てきますが、独断で暴走されるよりはましだという考え方です。

サンプル1 検査合否判断

甲及び乙は、乙が甲に納入した製品を甲乙同席のもと検査し、甲乙別途定めた基準を満たすとことを相互に確認したときに検査合格とする。

サンプル2 対応方法選択判断

本契約終了時、甲は、乙から開示された秘密情報を、甲乙協議して定めるところにより、消去し、または乙に返却する。

サンプル3 目標到達判断

試作品が開発目標レベルに到達したと甲及び乙が認めたときに、本共同開発は終了する。

判断基準を客観的なものにする

判断基準を客観的な基準にしましょうという提案です。客観的な判断基準があれば主観や意図が入り込む余地は少なくなります。

サンプル1 検査合否判断

甲は、乙が納品した製品を検査し、本契約に添付した検査合格基準を満たすと判断したときには乙に通知する。

サンプル2 対応方法選択判断

本契約終了時、甲は、乙から開示された秘密情報について、データ形式で開示されたものは廃棄、削除し、または書面、サンプル品等有体物で開示されたものは乙に返却する。

事例3 目標到達判断

試作品が本契約添付の開発目標基準に到達したと甲及び乙が認めたときに、本共同開発は終了する。

緩和ワードを入れる

いずれも拒否された場合の最後の手段と思いますが、相手方の判断することは認めるがめちゃはやめてねという趣旨のワードを入れ込む方法です。

サンプル1 検査合否判断

甲は、乙が納品した製品を検査し、甲が別途定めた合理的な基準を満たすと客観的に判断できたときに乙に通知する。

サンプル2 対応方法選択判断

本契約終了時、甲は、乙から開示された秘密情報を、乙の合理的な選択により、消去し、または乙に返却する。

サンプル3 目標到達判断

試作品が開発目標レベルに到達したと乙が合理的に認め、甲に通知したときに、本共同開発は終了する。